HKSソアラC240の開発コンセプトは「純正」。その意味とは? その6【OPTION 1984年12月号より】

【魅力的なエアロチューン】

次はボディ。つまりドレスアップ&エアロチューンである。

ボディの外装。つまりスタイリングは、クルマを購入するうえで大きなウェイトを占めている。そのためにソアラの魅力を活かしながら、さらにカッコよくするという考え方がエアロチューンには多い。C240も例外ではない。

しかし大きく違うのは、本来の目的である空力に本気で取り組んだことだ。240km/hカーとしてスタイリングばかりに気を取られては話にならない。

そこで1/5モックアップモデルを製作して幾度も風洞実験を重ねてスタイリッシュに仕上げながら、高い空力効果を狙ったのだ。

魅力的なオーバーフェンダーも、そうして作られている。これは最近の高性能ヨーロッパ車がそうであるように、空力的には何らドラッグを発生しない形状なのだ。かつてのオーバーフェンダーはボディサイドの空気を乱してしまったが、この形ならOKというわけ。

サイドステップも同じだ、本来は下面やボディサイドの空気の流れを整流するものだが、その目的を達成させるには、この程度の大きさではダメ。スーパーシルエットのそれになるという。が、それではストリートでは使えない。だからドレスアップ効果が主眼だ。

しかし、ここで注目したいのは、このサイドステップはドラッグになっていないということ。アフターマーケットのサイドステップにはCL(揚力係数 f:前/r:後)値に悪影響を与えているものが少なくないのだ。

そしてフロントスポイラー。これは谷田部の空洞実験により決定された。なんと、今、メーカーがその低減に血道をあげている空気抵抗係数Cdが0.38→0.41と大きくなっているが、揚力となるCLf値は0.18→-0.34と大幅に向上しているのだ。

わずかなCd値の差はHKSでは軽視する。空気抵抗がどうのこうのという前に、高速でも不安なくアクセルが踏める安定性が必要だからだ。パワーがあっても、ボディが浮いて危なっかしいのでは失格だ。CLf値は素晴らしく向上している。これはフロントの揚力を抑え、タイヤの接地性を向上させていることになる。俗にいう「高速になるほど路面に吸い付く感じ」といえば分かってもらえるだろう。

Aピラーからフェンダーにかけてのスポイラーも面白い。が、単なるドレスアップではない。コーナリング時、直進時にリヤトラクションを増大する効果があるのだ。これはスーパーシルエットカーにも採用されている。このスポイラーはフロント&リヤのダウンフォース効果を高めることができ、旋回性能、直進性脳に貢献するのだ。

リヤウイング。これはAピラーのスポイラー効果をより効果的にさせるもので、リヤのダウンフォースが強化されていることは、風洞実験写真を見てもらえば分かるだろう。そして風洞実験ではCd値の変化はなく、CLr値がマイナス0.1からマイナス0.21へ向上している。

これらのエアロチューンはCL値をトータル80%あまり向上させている。トヨタ・ソアラとは比較にならないほど直進性、旋回性、操安性は向上している。

このようにC240は、エンジン、足まわり、ボディとトータルにチューニングされ、ハイレベルでバランスのとれたコンプリートカー「純正」として生み出された新車なのだ。

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純正を超えるHKSコンプリートを目指しての、C240開発! その開発能力も開発費用も大メーカーならではのチカラ、なのでしょう。その後のBNR32ベースのZERO-Rへと続く開発コンセプトでした。感服です!

[OPTION 1984年12月号より]

(Play Back The OPTION by 永光やすの)

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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