デミオなどの小さなクルマでもCX-8のような大きなモデルでも安全性能に差をつけないのがマツダ流。そのうち、衝突性能開発の現場とはどんな組織なのでしょうか。
マツダの車両開発本部の1部門である衝突性能開発部は、「部付(実験設備)」、「衝突性能先行技術開発グループ(先行技術開発、CAE解析)」、「前面衝突安全開発グループ」、「側面・後面衝突安全開発グループ」、「ユニット安全開発グループ(むち打ち、歩行者保護、車体強度など)」に分かれています。さらに、子会社のマツダE&Tにも車両開発本部と衝突性能開発部があり、衝突実験の実施に加えて、一部の開発を委託しているそうです。
取材陣が訪れたのは三次自動車試験場にある衝突実験棟で、1号棟、2号棟があり、2018年春の竣工予定である新衝突実験3号棟も外観は仕上がっているようでした。3号棟は屋内型の「車対車」の衝突試験設備になります。マツダの衝突安全性能の開発は、先行開発(一括企画)、個別車種開発に大別されています。
一括企画とは、同社独自のモノ作り活動。従来は車種ごとに開発され、開発と生産の現場がすり合わせしていたものを、開発や生産や購買だけでなく、サプライヤーも一体となって将来を見通した商品、技術について議論を重ねることで、5~10年単位で将来を予測し、全車種について一括で企画するというもの。
余談ですが、一括企画で「ありたい姿」を見据えることで多くの利点があるものの、万一、最終的な段階で問題が出てくると後戻りできない(しにくい)そう。
衝突性能開発では、目標設定として各国や各地域のN-CAPなどを踏まえた目標設定やマツダ独自の目標が掲げられ、「シナリオ構築」と呼ぶ段階で、エネルギー吸収(EA)の配分決定、ボディ構造のロードパス構造の決定、骨格部材の決定などがされます。その後「個別車種開発」で、「構造化(形状、接合、材料の観点から構造を決定)」、「検証(ユニットや実車)」と進んでいきます。
次回は、同社の衝突性能開発の具体的なプロセスについてご紹介します。
(文/塚田勝弘 写真・図/マツダ)