ミッションだけじゃない。クルマの「未来」を作るサプライヤー・ZF

クルマ好きの方なら、ZFという名前を聞いたことのある方も多いと思います。

ZFはミッションメーカーとして有名なドイツの企業です。創業は1915年で、最初は飛行船ツェッペリリン号に使うギヤを製造していました。その後、自動車用のミッション製造に進出しました。

多くの自動車評論家がクルマの紹介文やインプレッションを書く際に、採用されているミッションのブランド名を明記したことも手伝って、ZFという名前がミッションメーカーとして認知されることになりました。

そうしたZFですが、現在はエレクトロニクス分野にも強いサプライヤーとして、クルマのさまざまな部分の製造を担当しています。

ZFの日本法人であるZFジャパンは、11月初旬に静岡県の富士スピードウェイや周辺道路、高速道路を使った試乗会「Vision Zero Days Japan」を開催しました。この試乗会は自動車メーカーを対象としたものでしたが、一部メディアを招待。クリッカーも呼ばれました。

さまざまな技術が紹介されましたが、なかでも注目であったのが自動料金決済システム「Car eWallet」を組み込んだ電気自動車(EV)のプロトタイプでした。

このプロトタイプは、9月にドイツのフランクフルトで開催されたIAA2017(通称、フランクフルト・モーターショー)でワールドプレミア(世界初公開)されたモデルで、ドイツ国外では今回が初のお披露目となりました。

「Car eWallet」はETCに似た機能を持っていて、あらかじめチャージしておくことで有料道路やパーキングの支払いが自動で行われます。さらに充電時の支払いも自動で行えることをめざしています。

面白いのは、駐車中のクルマの有効活用という分野です。たとえば通勤にクルマを使っている人のなかには、業務中はクルマを使わないという人もたくさんいます。そうしたクルマを第三者がカーシェアとして使えるという機能も備えています。また、トランクを宅配ボックスとして使うという機能も可能となっています。

デモカーにはeTBと呼ばれる駆動方式が採用されていました。eTBはリヤホイールには独立したモーターが装着する方式です。この方式ではエンジン車からの変更が楽に行えることが特徴。リヤを駆動することで、フロントタイヤの切れ角は75度と飛躍的に大きくなり、びっくりするほどの小回りを実現していました。

ETC的なすでに実用化されている技術はもちろんですが、カーシェアや宅配ボックスという発想、そして革新的な小回り性能は、今そこまで来ている近い将来を見せてもらっているような感じがしました。

(文:諸星陽一/写真:IZM・小宮岩男)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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