狭い場所でも雨の日でも乗り降りをラクに。サイドリフトアップチルトシート車【進化する福祉車両・ウェルキャブ】

ノア・ヴォクシー・エスクァイアをベースとしたサイドリフトアップチルトシート車(以下、チルトあり車と記述)は、左側のセカンドシートが回転し、車外へスライド。さらにシートがチルトして、地面に足をついたまま着座がしやすくなる仕様です。

従来からあるサイドリフトアップシート車(以下、チルト無し車と記述)が、同じ用途のために用意されていますが、今回のチルトあり車は、足着き性をアップさせるためにリフト機能だけを使わず、チルト機能を加えて併用。これによって車体からせり出す量を減らしていながら、チルトのサポートにより立ち上がりやすさもプラス。

ちなみに、同じ車種でチルト無し車よりもシート高が10mm多く下げられるようになっています。

さらに、乗降に必要なスペースはチルト無し車が1100mmところ、チルトあり車は550mmに抑えられており、半分の幅で乗降が可能です。

結果、使いやすさは向上していながら、駐車場で隣のクルマとの間のスペースが狭くても、乗降ができる可能性が増えています。ざっくり言って、助手席のドアが普通に開けられれば機能を使える印象です。

チルト無し車の乗降に必要なスペースは、1100mmほど。

チルトあり車では550mmとなり、助手席の乗降が可能ならば、リフトが使用できるせり出し量となっています。

せり出し量が減ったメリットは、外出先での取り回しはもちろん、自宅などの車庫でも使用できる点。車庫の左右幅が狭く、従来型のチルト無し車では乗降が不可能だった場合でも、助手席の乗降ができる環境ならば、セカンドシートにも乗降できる場合があるということです。

介護のためのクルマ購入とともに車庫付近の改築などを余儀なくされ、車両代金に加えて金銭的な負担が増えていたケースがあったといいます。これらが減ることによって、導入へのハードルも下げられるとみられています。

さらに、従来のチルト無し車では雨の日にせり出たシートが濡れてしまいがちでしたが、チルトあり車はシートがほとんど車外に出ないため、介添者が同乗者とシートの双方をひとつの傘の中に入れてあげることもできるそうです。

足着き性向上に立ち上がりやすさもゲットして、せり出し量減少で使える機会が増え、雨にも濡れにくい。サイドリフトアップチルトシート車の進化に驚きですね。

古川教夫

【関連記事】

4人に1人が高齢者という高齢化社会。クルマができるコトを突き詰めて考えた【進化する福祉車両・ウェルキャブ】
https://clicccar.com/2017/11/12/522227/

この記事の著者

古川教夫 近影

古川教夫

1972年4月23日生。千葉県出身。茨城大学理学部地球科学科卒。幼稚園の大きな積み木でジープを作って乗っていた車好き。幌ジムニーで野外調査、九州の噴火の火山灰を房総で探して卒論を書き大学卒業。
ネカフェ店長兼サーバー管理業を経て、WEB担当として編プロ入社。車関連部署に移籍し、RX-7やレガシィ、ハイエース・キャピングカーなどの車種別専門誌を約20年担当。家族の介護をきっかけに起業。福祉車輌取扱士の資格を取得。現在は自動車メディアで編集・執筆のほか、WEBサイトのアンカー業務を生業とする。
続きを見る
閉じる