日本の化学大手 三菱ケミカルは、アウディの新型「RS 5 クーペ」のルーフに三菱ケミカルの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が採用されたと発表しました。
最近、自動車の軽量化のためにアルミやCFRPを車体の材料に採用することが世界中の自動車メーカーで増えていますが、アウディによる三菱ケミカルのCFRPの採用もその一例となるものです。
アウディが2017年6月に発売したプレミアムスポーツクーペ Audi A5シリーズのトップモデル「RS 5 クーペ」のルーフには、新素材として三菱ケミカルの炭素繊維複合材料をPCM(Prepreg Compression Molding)工法の一種であるハイサイクルプレス成形で製品化された部材が使われています。
このアウディ「RS 5 クーペ」のCFRP製ルーフは、ドイツにある三菱ケミカルのグループ会社で自動車用炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製部品メーカーであるWethje Carbon Composites GmbH(「Wethje(ベティエ)社」)が炭素繊維複合材料をルーフに成形し、アウディに納入しています。
三菱ケミカルが独自に開発したCFRP部材の量産成形技術であるPCM工法は、積層したプリプレグ(樹脂を含浸させたシート状の炭素繊維中間基材)をプレス機で圧縮成形する工法で、今回ベティエ社が 採用したハイサイクルプレス成形という成形法では約5分という短時間のサイクルタイムで、自動車向けCFRP部材の量産を可能とするメリットがあります。
成形品の表面の平滑性が高いため成形品のアウター(表面)はクラスA塗装が可能な品質で、そのまま自動車車体の外板部材として使用できるということですが、今回のアウディ「RS 5 クーペ」の場合は、さらに工法を改良して、成形品のアウターに塗装を施すのではなく、カーボン織物の模様を部材表面に生かしたカーボン織物仕様としたルーフを量産することにも成功しました。
三菱ケミカルのCFRPがアウディ「RS 5 クーペ」に採用された決め手となったのは、アルミで成形した同じ部品と比較しても約40%軽量化できるというCFRPの大幅な軽量化メリットに加えて、このルーフ部材の軽量化により自動車の重心を低くでき運転性能を向上できる点、さらに、ルーフ部材のアウターをカーボン織物仕様として高品質で魅力的な意匠性を兼ね備えている点が高く評価されたことによるものです。
今後、このアウディ「RS 5 クーペ」の事例に限らず、自動車車体の軽量化のためにCFRPの採用がますます増加することが予想されます。
(山内 博・画像:三菱ケミカル)