自動運転時代への気になる法整備、最新事情は?

自動運転・運転支援技術の進化は目覚ましい。

今秋発売の4代目「アウディA8」は、市販車初となる自動運転「レベル3」ということで話題となっています。レーダーセンサー、フロントカメラ、超音波センサーに加えて自動車で初採用というレーザースキャナーを搭載し、中央分離帯のある高速道路上では60㎞/h以下での走行中に発進、加速、ステアリング操作、ブレーキの操作を自動で行う「アウディAIトラフィックジャムパイロット」で、運転中に手放し運転やテレビやスマホ操作も可能。とはいえ、システムが限界になると運転はドライバーが行わねばなりませんが。

ちなみに最新のSAEが定める自動運転の「レベル3」では、「条件付き運転自動化」。『システムは限定的な領域で運転は可能ですが、システムが運転者に介入要求をした場合は適切に対応しなければならない』のです。

実はこのレベル3は非常に難しいのです。テレビやほかのことに気を取られた人が、運転にすぐ対応できるとは思えません。そうなった場合、もし万が一事故が起きたときには誰が責任を負うのか、という「自動運転」や「運転支援技術」で気になるのは法律の問題。

自動運転は、事故の削減、環境負荷の軽減、高齢者の移動手段として期待される一方で、従来とは異なる責任問題が生じる可能性があります。

するとその最新状況がわかる「自動運転をめぐる法整備の最新動向~行政の動き・システム責任問題・模擬裁判~」というタイトルのセミナーが行われるとのことで参加してきました。ちなみに講師は明治大学 法科大学院 法務研究科 専任教授で日本民事訴訟法学会の理事でもある中山幸二氏。

現行法での損害賠償責任は、対人事故に関しては自動車損害賠償保障法による運行供用者の責任。対物事故は民法によって過失責任が問われます。しかし自動運転になるとレベル3まではこれまでの考え方が適用可能ですが、レベル4となると自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任に関しても検討が必要です。また個別の課題は、システムの欠陥の場合、製造者の責任の可能性や、サイバー攻撃による事故の場合、外部データのご認識や通信が遮断された場合、過失割合の複雑化で損害保険にも影響があるのではないかなどに関して、警察庁、国道交通省、経済産業省がそれぞれ有識者会議を開催し検討。

ここ2~3年では、事故の究明と再発防止のため、ドライブレコーダーの設置、保存、提出義務。法令順守によるアルゴリズムや速度制限や追い越し禁止などの法律と安全のどちらを優先させるのか?遠隔操作での範囲や距離はどこまで許容されるのか?社会のニーズと普及に向けて努力などが検討されています。

個人的には、具体的な事例を挙げて模擬裁判を行っているという取り組みが気になりましたが、私もいくつかの疑問を感じました。

まず、「自動運転」となることで、それを製造するメーカーやサプライヤーが訴訟されることが増えてしまうのではないか?

そして、自動車を購入する際にディーラーでクルマの操作系などの説明を受けても、理解できなかったり、聞かないまま購入した際で起きたトラブルに関しては誰が責任を負うのか?など。ということは、実際に自動運転が普及した時には、想像していないようなことが起きそうです。

吉田 由美

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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