ドライバーから、駆けぬける歓びを「奪わない」ハイテク装備【BMW 5シリーズ ツーリング試乗】

5シリーズセダンとともにツーリングにもハイテク装備が揃っている。

ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)はハンドルスポークに左手の親指で操作するようにレイアウトされたステアリングスイッチで操作する。

上右にあるメインスイッチとその下のスピードセットを兼ねたスピードの上下スイッチ、左下に先行車との車間距離を4段階に調整できるスイッチ、その上にリジューム(復帰)とキャンセルの共通スイッチが並ぶ。

スピードの上下スイッチは、小さいストロークでは1km/h単位で、大きいストロークだとスピード表示の10km/h単位でセットできる。

ACCによる車間距離の調整もスムースにできるようになっている。10年以上前の初期のころはスピードコントロールにやや角が感じられたが、それもなくなり運転が上手くなっている。

渋滞モードも組み込んであり、先行車が停止するとそれに習って停止する。こちらが止まってから3秒以内に先行車が再出発する場合には自動で再出発する。停止してから3秒以上でエンジンもアイドリングストップする。先行車が再出発するとこちらのクルマもアイドリングストップから再始動してドライバーに出発を促す。このときの再出発はアクセルペダルを軽く踏むか、ステアリングスイッチのリジュームスイッチを押す。

左側のステアリングスイッチの左上には車線とハンドルマークが入ったスイッチがある。これはレーンキープアシスト(車線維持装置)である。

ハンドルを持っていなければキャンセルされてしまうもので、自動運転とは言っていない。あくまでも運転支援システムである。ドライバーがハンドルを持っていたとしても、これがあるとカーブでハンドルを誘導するように車線に沿って走れるようにハンドルが動いてくれるので楽である。

ACCと組み合わせると高速道路を長距離ドライブするときのドライバーの疲労軽減になるはずだ。また同乗者がいる場合には、スピードの変化もないしカーブでのクルマの動きもスムースなので、快適性は向上するだろう。

今回は試す機会がなかったが、車線がない場合でも先行車についていく機能もある。ワインディングロードでは先行車に従ってカーブを曲がるので、まるで乗馬の感覚だった。馬に乗っていると道があればその道に従って馬が走ってくれるのと感覚が似ている。

クルマの技術開発は素晴らしいし、ハイテク装備も充実しているが、BMWは基本的にドライバーから「駆けぬける歓び」を奪おうとしていないところが徹底していると思った。つまりハイテク技術を使っていても、ドライバーの操作の邪魔をしないからだ。

(菰田 潔)