1880年代中盤にドイツでガソリンエンジン付きの自動車が発明されてから130年あまり。クルマは単なる移動手段から、所有する喜びや運転する楽しみなど、私たちの幅広い欲求を満たしてくれる存在へと進化してきました。楽しく便利なクルマですが、最近は特に環境や安全面での性能が強く求められる変革の時代を迎えています。そのような流れは、安全、効率、自動運転という自動車業界の「メガトレンド」と呼ばれています。
こうしたメガトレンドに対応し、個々の部品を統合して「システム」として自動車メーカーに提供する会社は「メガサプライヤー」と呼ばれています。その一社が自動車発祥の地、ドイツに本社を置くゼット・エフ・フリードリヒスハーフェンAG=ZF(AGはドイツ語で株式会社の意)です。
そんなZFが、「人とくるまのテクノロジー展」には、「See-Think-Act」(=見て、考えて、動かす)というテーマのもと、最新技術・製品を展示していました。楽しさ、利便性や快適性だけでなく、クルマをより高効率で安全なモノに進化させていく技術について見ていきましょう。
「See」:センサー
展示ブースで一番大きなスペースを割いていたのが、高度運転支援システム(ADAS)関連。ここでは、「See-Think-Act」に関連する最新の要素技術が紹介されていました。
まずSeeにあたる部分である各種センサー類。業界最小サイズの「S-Cam4.6」前方カメラは、アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)、ヘッドライトコントロール、自動緊急ブレーキ(AEB)などに加え、信号、道路標識、大型動物や歩行者の認識・検知機能も可能にするそうです。検知角(FOV)も52度と100度のモデルがあり、FOV100は前を横断中の歩行者や自転車などの検知機能が強化されているとの事です。
その隣にあった「Tri-Cam」前方カメラは、クルマのすぐ近くから遠くまでの環境を正確に認識できるよう、広角と望遠を組み合わせた3つのレンズと撮像素子が一体ユニットに収められている複眼カメラです。FOVは28度、52度、150度の組み合わせと、50度、100度、150度が選べ、300m先のクルマ、120m先の歩行者を検知できる性能をもっており、まさに、広く遠くまで見渡せる「目」になるわけです。
画像という形で情報を得るカメラは文字や表示などの認識能力が高い一方、人間の目と同様に悪天候や夜間など視界の悪い状況では一般的に能力が低下します。そのような時に精度の高い物体検知が可能なのはレーダー。ZFの「77HGz AC1000 EVO」前方レーダーは、時速40kmを境にFOV100度/最長検知距離80mと同30度/200mに切り替える事ができるそうです。速い時は遠くを見て、遅い時は近くを幅広く見てくれるわけです。
レーダーとカメラ、双方の利点を組み合わせれば、クルマだけでなく歩行者や自転車を含むすべての交通環境を非常に高い精度で検知する事が可能になります。ACCの性能向上による利便性や、より安全なAEBなど、快適性と安全性、両面の向上に大きく貢献してくれそうです。
またクルマの安全性を強化し、自動運転の実現につなげるためには、前だけでなく360度にわたる周辺環境認識も必要です。ZFでは、フロントおよびリア用コーナーレーダー「77GHz AC1000 EVO」が前方レーダーやカメラと連携して、死角検知、車線変更支援、道路横断物体警告など各種の自動運転に向けた機能をサポートするそうです。