■ニコ・ロズベルグvsルイス・ハミルトン
レーシングカートの時代から、互いの腕を競い合ってきたロズベルグ選手とハミルトン選手。ともにGP2王者を獲得し、F1へステップアップしたものの友情はいつしか対抗心へと変わっていってしまいました。2013年以降はチームメイトとして幾多の激闘を繰り広げたふたりの軌跡を振り返ります。
「以前は、ルイスが僕のモナコの自宅に予告もなしに立ち寄って一緒に食事をしたり、ただおしゃべりをして過ごすなんてこともよくあったんだ。でも、そういう関係は終わってしまった。」
と語るロズベルグ選手。そして、二人がグランプリ・ドライバーとしてコース上で戦うようになると、ハミルトン選手も二人の友情はすでに過去のものであることを明言しました。
さらに、ロズベルグ選手は言います。
「僕らの間には、常に対抗心があった。それはサーキット以外の場所でも変わらなくて、本当にくだらないことで競い合っていたよ。たとえば、ピザを食べに出かけるとどっちがたくさん食べたとか、さもなければ、どっちが早く食べ終わるかで競争したりする。全てがそんな調子なんだ。僕らはいつも互いに、コイツには絶対に負けたくないと思っていた。」
カートチームCRGのチームマネージャーで、二人のライバル意識が高じて様子を近くで見ていたキエーザ氏は、二人の違いについてこう語っています。
「ルイスが勢いに乗った時には、まず誰にも止められない。ごく一部の限られたドライバーが持っている特別な『何か』を彼は備えているんだ。ただ、最終的な速さに関しては、ニコとルイスは同レベルにあると思う。私は長年、彼らを見比べてきたが、それはグランプリのスターになるまでの過程を通じてずっと変わらなかった。明らかな違いがあるのは、ハングリー精神の強さとレースでのアグレッシブさだね。ニコはレースで負けると、すっかり意気消沈してしまう。だが、それも一日限りで、翌日には気持ちを切り替えて前へ進み始める。現実主義だけに、すぐに次の仕事に集中できるんだ。一方、ルイスは誰かに負けるとその自分をどうしても許せないようで、そのことを決して忘れない。」
そんな対照的な二人ですが、ロズベルグ選手は引退を表明した際、直接ハミルトン選手にメッセージを送ったのだそうです。
「僕らはこれまでも何度もバトルをしてきた仲だからこそ、この決断を彼に直接伝えるべきだと思った。だから、彼にメッセージを送ったんだ。」(ロズベルグ選手)
ハミルトン選手も、ロズベルグ選手の引退を受けて次のようにコメントしています。
「僕らは13歳の頃にレースを始め、いつかF1チャンピオンになるとふたりで話していた。僕がメルセデスに加入した時にも、ニコと同じことを話したんだ。そして、彼は初めてタイトルを獲得した。だから、彼が引退するという決心をしたことに驚かなかったよ。ただ、次のシーズン、チームに彼がいないと思うと寂しくなる。今後の彼の活躍を祈りたい。」
正反対と言っても良いほどの二人だからこそ、互いに意識しあいライバルとして切磋琢磨してきたのでしょうね。でも、最強のライバルであると同時に友情を超える素晴らしい絆があるように思えます。二人の戦いが見られなくなるのは寂しいですが、ハミルトン選手の言うように、ロズベルグ選手の今後の活躍を祈るばかりです。