ドイツの化学大手 BASFは、同社の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)「エラストラン(登録商標)」を使用した合成皮革で、自動車用シートの快適性が向上することをアピールしました。
上の写真は「エラストラン」を使用した合成皮革。きれいにシワが入っていて、なかなかの仕上がりを見せています。BASFによると「エラストラン」を使用した合成皮革は、柔軟性が極めて高く、耐摩耗性にも優れ、自動車用シートや家具などに適用される揮発性有機化合物(VOC)の基準にも適合します。
「エラストラン」の特徴は、無溶剤で中間層を介さずに直接生地に押出成形が可能で、優れた柔軟性がもたらす触感と耐久性を備えていることです。
今回、合成皮革の大手メーカーであるSuzhou Ruigao New Material 社は、中国の自動車メーカーの最新モデル向けの合成皮革の原料として、「エラストラン」のグレードB50A12CF を採用しました。このグレードは凝固性の面で従来よりコスト効率が高く、環境に優しい合成皮革を製造することができます。
BASFパフォーマンスマテリアルズ事業本部でアジア太平洋地域のインダストリアル部門代表を勤めるトニー・ジョーンズ氏は
「「エラストラン」は、合成皮革の生産工程を大幅に簡略化し、スピードアップすることが可能です。溶剤を使用することなく直接生地に押出成形でき、中間層が不要となるためです。自動車メーカーのお客様に本グレードをご利用いただくことで、特に自動車の内装用途でますます厳しくなるVOC基準への適合が実現しやすくなります。」
とアピールしています。
BASFのTPU樹脂が自動車に採用された例としては、2014年にシトロエン「 C4 カクタス」のバンパーなどの外装品に採用された先例がありますが、内装品、特に質感が重視される自動車シートにBASFのエラストランが採用されたことは、TPU樹脂の用途を広げることになります。
合成皮革の自動車シートで思い出すのが、以前のメルセデス・ベンツのEクラス(W124型)または190E(W201型)に設定されていた「MB-TEX」という合成皮革のインテリアです。
この「MB-TEX」仕様は、本革と見違えるような質感で、しかもタクシー車両として使用してもへこたれない耐久性を備えていました。
今回のBASF 「エラストラン」を原料とする合成皮革を使用した車両のシートの質感・耐久性が「MB-TEX」と比較して、どれだけのレベルに達しているのか、興味深々といったところです。
(山内 博・画像:BASF)