デンソーが車両電子システムのプロセッサ開発を強化のため、イマジネーションテクノロジーズ社と共同研究を開始。

デンソーは、英国の半導体メーカー イマジネーションテクノロジーズ社とプロセッサ(CPU)内で、複数のタスクを並行処理する際の処理能力を高めることができる「ハードウェア・マルチスレッド(Hardware Multi-thread)機能」(マルチスレッド機能)についての共同研究を開始すると発表しました。

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高度運転支援(ADAS)や自動運転技術の技術開発が進む中、自動車の電子制御が進展し、自動車には多数のコンピューターが組み込まれていることは読者の皆さんもよくご存知だと思います。そのなかでデンソーとイマジネーションテクノロジーズ社が行う今回の共同研究のテーマであるマルチスレッド機能とはどんな技術なのでしょうか?

CPUのマルチ化というと、すぐ思い当たるのはパソコン用CPUでおなじみのマルチタスク技術です。このマルチタスク技術は、インテル社のCOREプロセッサに代表されるマルチ・コアCPUに採用されており、複数の処理を同時にこなすことができます。

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マルチタスク技術では、上図のように複数の処理を2つのCPUで分担して処理し、複数のタスクを同時に処理する能力を向上させています。

ところが、マルチタスク技術で2つのCPUが分担するタスクはあらかじめ固定されており、処理能力向上に限界がありました。

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そこで、登場したのがマルチスレッド機能で、上図のように複数のタスクをどちらのCPUに分担させるかを、アプリケーションとOSの側で決定し振り分けるようにして、空いているCPUの能力を最大活用することが特徴です。

一方、車載CPUの分野では、ADASや自動運転のように、CPUには車両の動き全体を制御する能力が要求され、従来より高速で反応できるCPUが必要になっており、CPUの処理能力向上がADASや自動運転の性能向上に直結するようになっています。

このような車載CPUを巡る事情からデンソーは、CPUの「マルチスレッド機能」で世界をリードする技術を持っているイマジネーションテクノロジーズ社との共同研究で、エンジン制御用CPUである複数のECU間を接続する機能を中心にマルチスレッド機能をより効率的に車載CPUに利用することを目指しています。

(山内 博・画像:デンソー、NATIONAL INSTRUMENTS社)