■once upon a grand prix
一枚の写真が語る、F1の歴史。今回は2003年4月18日サンマリノGP開始直前にタイムスリップです。
2003年第3戦ブラジルGPは雨が降り続く悪条件下、セーフティーカー先導でレースはスタートしました。滑ってコースを飛び出すドライバーは後を絶たず、王者ミハエル・シューマッハー選手(フェラーリ)も27周目にコースアウトする始末。71周予定のレースは大混乱のなか、55周目(と思しき周)に赤旗終了となりました。
大混乱のブラジルGP優勝したのはイタリア人のジャンカルロ・フィジケラ選手(ジョーダン)。この時30歳、F1グランプリ出走110戦目。96年F1デビュー当初から将来を嘱望されながらも、ここまでの7年間は、勝てそうで勝てないつらい日々でした。
赤旗時は走行周目の2周前の順位が採用されるというルール(トップ走行車を抑えず即刻中断となるため、全車が通常走行で完了した最終周を採るという判断)の適用を巡って関係者間で粉糾、掲示モニター上は55周終了順位(56周目)でフィジケラ選手がトップと一瞬表示されるも、直後に54周に戻り、53周終了時点ならキミ・ライコネン選手(マクラーレン)がトップ、2位フィジケラ選手、3位フェルナンド・アロンソ選手(ルノー)とされました。
F1協議団がブラジルからパリのFIAに戻って審議を重ねた結果、レースから5日後(4月11日)、ジョーダン陣営の訴えが通ってフィジケラ選手の勝利が決定・発表されました。赤旗中断時点で、フィジケラ選手がすでに56周目に入っていた証拠が判明。つまり、最終結果は53周終了時点ではなく54周終了時のものが有効となります。フィジケラ選手は0.945秒差でライコネン選手をかわしていたのです。
インテルラゴスでは勝利を祝えなかったフィジケラ選手とジョーダンでしたが、2週間後の次戦サンマリノGPで粋な計らいが待っていました。ブラジルGP優勝トロフィーを持ち帰っていたマクラーレン陣営が、フリー走行開始直前のイモラのスターティンググリッド上でジョーダン陣営にトロフィー返還を行ったのです!
若々しいフィジケラ選手とライコネン選手、二人ともかっこよすぎる!! そしてチーム代表たる、ともにクセ者のエディ・ジョーダンとロン・デニスの笑顔も最高なんです。これはFIAの公式行事ではなく、あくまでも非公式なもの。人間の温かみを感じる、素敵な一枚です。
本誌には今回のマッサ選手の感動シーンの他にも、マッサ選手の単独インタビューやF1関係者が語るマッサ選手との思い出などの引退特集、そして先程紹介したフィジケラ選手とジョーダンへトロフィー返還シーンと、レース中とはまた違った人間ドラマを知る事ができ、読んだ後に心がほっこりする「F1速報ブラジルGP号」でした(^^)
(yuri)