自動車雑誌の聖地「高原書店」店舗閉店するわけは?

「高原書店」は出版社でも全国展開の大手書店グループでもありません。単なる書店、本屋さんです。けれど、全国のクルマ好きはその名を知っています。

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そう。高原書店は自動車に関する紙モノの集まる書店、いわば自動車好きの聖地なのです。

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その高原書店が閉店する、という情報が入りました。

店舗 閉店のご案内 お客様各位

謹啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。さて 突然ではございますが昭和59年開店以来32年余に渡りお引立ていただきました株式会社高原書店を諸般の事情により11月23日をもちまして閉店することとなりました。
これまで皆様の温かいご支援をいただきながら誠に勝手を申し上げます。
これまで賜りました皆様の長年にわたるご愛顧を心から感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
略儀ながら書面にてご挨拶申し上げます。

謹白

これは大変な事件、気になって現地へ向かいました。

実は以前、高原書店を訪れたのはもう10年ほど前。当時は一階が広い店舗、二階が倉庫のような状態でしたが、現店舗はいわゆる個人経営の書店サイズになっていました。

やはり縮小しているのか、といやな予感が頭をよぎります。

しばらく店内を見回ってみます。自動車雑誌、書籍の新刊はまだまだたくさん刊行されているんだな、と改めて感心します。古いカーグラフィックやモーターマガジンなどもずらりと並んでいます。自分が読んでいたモーターファンが並んでないのは少し残念です。カタログ類も懐かしモノからそれほど珍しくなさそうなモノまで押入れ収納庫のような中に入っていて100円から購入できます。

しばらく立ち読みしてから、社長の髙原英世さんとお話をすることができました。

ーー高原書店は閉店してしまうと聞いて来てみたんですけど。

高原「閉店というか店舗をやめるだけで、後は通販なんかでやっていくんですよ」

ーー(やっぱり売上減少→店舗閉鎖→通販のみで細々と、か?)はあ、紙媒体の自動車雑誌や書籍ってやっぱり売れなくなったんですよね。

高原「うーん、そうね。なかなか売れないね。だから店舗はやめて、通販中心で古い資料とかでやっていくんですよ」

そういう高原さんの表情は明るく、事業を撤退する経営者の顔ではない。高原さんに「ちょっとこっちへ来て」と見せてもらったのは、一冊だけガラスカウンターに陳列された4000円のモーターマガジン誌。その前後の同誌は2000円前後で取引されているらしく、倍くらいに値付けされています。

高原「この号はなかなか出てこないからこういう値付けをしている。なので、それをわかっている人はこれをお金と交換して貰えばいいし、そうでないなら買わなくていいんですよ。売ってもらう場合も同じ。なっとくのいく金額と思えば置いて行ってもらうし、そうでなければ成立しないでいいわけです」

ーー??? そうですよね(当たり前じゃん? どういうこと?)。

高原「中へどうぞ」

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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