Sタイヤがついに解禁!? D1GPのタイヤ戦争が激化したワケは…【TOKYO DRIFT】

D1GPに大きな変革が訪れています。それはタイヤ規定の変更です。

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従来、D1GPでは市販ストリート用タイヤだけが使用可能でした。レース用タイヤや、いわゆるSタイヤは使用できませんでした。

ここでご存じないかたのためにSタイヤというカテゴリーを紹介しておきましょう。

法規上、公道走行は可能ながら、耐久性の問題や騒音、振動などの面から公道走行は向かないとされるスポーツタイヤが、各メーカーから発売されています。これらはセミレーシングタイヤ、セミスリックタイヤ、略して『Sタイヤ』と呼ばれてきました。サーキット走行を主な目的としているのでグリップ力は高いです。

今まで、これらのタイヤはD1GPでは禁止されてきました(ごく初期は規定がなかったので使ってもOKでした)。ところが、このSタイヤの使用が来季から解禁になりそうなのです。

というか、なし崩し的にすでに解禁されているといっていいでしょう。先日行われたD1GP第7戦では、一般的にSタイヤだといわれている銘柄の使用を認可されたチームもあったからです。

これにはいろいろな背景があります。もともとタイヤ消費量が極端に多いドリフトにとってタイヤメーカーは最も重要なスポンサーといってもいい存在です。そのタイヤメーカーとD1主催者の意向によって、一般ユーザーがふつうに使えるストリートタイヤでやろうというのがD1GPの趣旨でした。

ところが近年、中国や台湾、インドネシアなどからの輸入タイヤがD1GPにも増えてきました。しかし、『Sタイヤ』というカテゴリーは、明確なスペック上の規定はなく、日本だけの慣例的な分類です。メーカーが「Sタイヤじゃないですよ」といえば、Sタイヤじゃないわけです。

海外、とくにアジアンタイヤメーカーにとっては、そんな『Sタイヤ』とかいう風習は関係ないので、日本でいえばSタイヤに匹敵するグリップ力のタイヤを出してきちゃうわけです。

でも文句はいえない。『Sタイヤ』というのは、現代においてはある意味ガラパゴス的なカテゴリーになってきちゃったというわけですね。

近年の齋藤太吾選手が使っていたのがまさにそういうタイヤで、昨年までのアキレス、今年のワンリーともに、日本のストリートタイヤではかなわないグリップ力を発揮して、圧倒的な強さを発揮してきました。ここまでひとりの選手が(しかもこういう形で)強いというのは、競技としてはあまりいい状況ではありません。

いっぽうで、日本のタイヤ業界にも変革が訪れます。86レースにおけるタイヤ開発競争が激化するとともに、Sタイヤに匹敵するグリップ力がありそうな、でも『Sタイヤ』とは自称していないタイヤが各メーカーから出てきてしまったのです。

そしてそれらは次々とD1GPにデビューしてきました。

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2016年シリーズで2勝した村山選手は、86レースから生まれたダンロップのハイグリップタイヤ、ディレッツァβ02を見事に使いこなしたことが勝因のひとつでした。そして、昨年のチャンピオンでありながら、今季前半は齋藤選手のスピードにまったく歯が立たなかった川畑選手も、TOYOのニュータイヤR888Rを投入したことで、最終戦では齋藤選手と互角の走りを見せました。

つまり、この“SタイヤみたいだけどSタイヤとはいっていないタイヤ”は、D1GPがつまらなくなることを防いでくれているのです。

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そんな状況もあって、D1GPの主催者は、有名無実となりつつある『Sタイヤ禁止』規定を来年には廃止してしまおうと考えているようです。

ただ、これまた難しい問題が出てくる可能性があります。

国内のメーカーが高価なSタイヤを今までのストリートタイヤと同じようにD1GPに出してくれるのか? 現在D1で使うサイズにSタイヤ相当の銘柄を持っていないグッドイヤーはどうするのか? といった問題です。

海外タイヤを排除するというのは、経済も含めてグローバル化が進む現在、時代に逆行するのであまりいい手ではないでしょう。D1主催者にとっては、競技の面白さやルールの明確さを保ちつつ、スポンサーにも納得してもらわないといけないなかで、むずかしい舵取りを強いられる状況になっています。

いずれにしろタイヤ戦争は激化の一途をたどっており、そのおかげで超絶ハイスピードバトルが楽しめるようにもなっています。

10月22日にお台場で行われたD1GP最終戦では、ワンリータイヤを履く齋藤選手と、TOYOのニュータイヤR888Rを履く川畑選手が決勝で対戦した結果、川畑選手が斎藤選手をプッシュしてしまって齋藤選手が勝ちました。

いっぽう翌日に行われたエキシビションマッチの追走では、またしても齋藤選手と川畑選手が決勝で対戦した結果、齋藤選手が川畑選手をプッシュしてしまって川畑選手が勝ちました。

いずれも、以前は考えられないほどものすごいハイスピードドリフトの応酬でした。

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(まめ蔵・写真提供:サンプロス)

【関連リンク】

D1GP第7戦の模様は11月26日発売の『ビデオオプションvol.273』に収録予定。

ビデオオプションの情報は公式サイトへ。また、D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイトまで。

この記事の著者

まめ蔵 近影

まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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