キャンバスのデザインは「陶器の輝き」─ ダイハツ・デザインの新ジャンルをインタビュー(前編)

ミラ・ココアの後継かと思われたムーブ・キャンバスは、まったく新しいジャンルの軽として発表されました。

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そこで「デザインにおける新しさとは何か」を、デザイナーにインタビューしました。前半では、コンセプトからサイドボディのデザインについてお伺いしました。

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[語る人]
ダイハツ工業株式会社
デザイン部デザイン室主任 畑 延広 氏
カラーマテリアルフィニッシングユニット 小池久弥代 氏

── はじめに、造形上のコンセプトから教えてください

「ナチュラル、愛着、アクティブの三つのキーワードから『ステキ・リラックス』としました。女性をメインターゲットとして、「ナチュラル」は柔らかいラウンドシルエット、「アクティブ」は使えるロングシルエット、「愛着」は斬新なツートンのストライプカラーとして表現しています」

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── 昨年の東京モーターショー出品の『Hinata』がオリジナルかと思いますが、有名なVWバス(タイプ2)のイメージも重なりますね

「Hinataの直接の市販版ではありませんが、デザインスタディといえます。VWバスについては、楽しい雰囲気をどう演出するかの検討段階で話に出ましたが、それを目指そうとはなりませんでしたね」

── 近いカテゴリーにタントやミラ・ココアがありますが、2台との棲み分けは?

「家族のタントに対し、母娘のキャンバスは全高を下げ、よりパーソナルなイメージとしています。ミラ・ココアとは同じ『テイスト系』ですが、ロングキャビンによる使い勝手重視のパッケージがキャンバスの独自性でしょう」

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── では、フロントから見ていきます。横楕円のフロントランプには何かモチーフがありましたか?

「いえ、形状自体にはありません。リアに向けて流れるボディラインの出発点としつつ、同時に愛らしさを持たせました。一方で、ランプ内部はジュエリーをモチーフとして、リングと宝石を表現しています」

── サイズに厳しい軽では珍しく、グリルとバンパーに明快な段差を設けていますね

「特徴であるツートンのストライプカラーを際立たせるため、ここはわざわざ別パーツで構成しました。こうした立体造形は質感のアップにもつながるんですね」

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── 丸いエンブレムはかなり大きめですが、アクセントの意図があるのですか?

「はい。ミラ・ココアもそうですが、テイスト系のクルマでは社名のDの字以外の専用表現としています。今回は『canbus』のCとBをモチーフとし、女性が身につけるアクセサリーをイメージしてまとめました」

── ボディサイドに移ります。ルーフの前後ではかなり丸みを持たせましたね

「シンプルな面でラウンド感を出したかったのがひとつ。もうひとつは愛着の表現でもありますが、思わず手で触りたくなるような優しい面の質感を出したかった」

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── 一方で、左右方向は大きく絞りませんでした

「タントほどではありませんが、やはり適度な広々感は必要です。また、左右の角をあまり削ってしまうと、ルーフラインの前後長がなくなり、キャビンが短く見えてしまうんですね」

── すべてのピラーがブラックアウトされていますが、これは必須条件でしたか?

「はい。前から後ろにスッと抜けることで、サイドボディの大きな面がうまく分割され、前後への長さ感が出てきます。同時に、シルエットをタントと異なる表現にしたかったこともあります」

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── その広いサイドボディですが、メッキモールの少し上に折れ線というか、淡いラインを入れたワケは?

「これだけ広い面なので、張りを持たせるためには面を一旦凹ませて再び出す必要がありました。これがないとペナペナになってしまう」

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── ホイールアーチについて、最近は強い凹面でキッチリした表情を出す例が多いですが、キャンバスはずいぶん穏やかな面です

「実は、当初からボディを陶器のように滑らかに見せたい意図があって、強い表現はやりたくなかったんです。また、ことさら走りを強調する必要もないので、最低限の凹面で微妙な表情を作ったわけです」

続きは後編にて…

(すぎもとたかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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