この素晴らしい走りの反面、安全性や利便性での進化は小幅に留まっています。
まず気になったのは、右ハンドルの場合にペダル全体が車体中央に寄っているために右足の圧迫感が強いこと。さらに、ルーフを閉じれば後ろ側方の視界は当然皆無。新しいナビもスッキリしたデザインは美しいですが、スマホと比べると反応は鈍い。是非とも左ハンドルを選びたいところです。
結局のところ、ポルシェの代表選手「911」の弟分として登場したという生い立ちや、オーナーにふさわしいとされる“身の丈”を挙げるのは、クルマが富の象徴だった時代の名残を捨てられないだけなのでしょう。
純粋な目で「718ボクスターS」をみると、これはクルマ好きが存分に楽しむためだけのクルマでしかなく、良い家に住んで、美味しいご飯を食べて、ブランド物に身を包んでオシャレをすることは果たして前提なのでしょうか?
もしかしたら、危うく丸め込まれるところだったのかもしれません。しかし、納車の暁には、彼らはワタクシを取り調べるに違いありません。それに対してワタクシはこう答えます。
「欲望を抑えきれなかった……しかし、選択は間違っていなかった」と。
(今 総一郎)