2016年ル・マンでトップのトヨタ5号車がゴール3分前で止まった原因をわかりやすく解説

歴史に残る結果を残した2016年のル・マン。やっぱり24時間走り続けて1番になることの難しさを改めて思い知らされてくれた気がします。

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それでも、なぜトヨタのTS050 HYBRID #5号車はストップしたのか? 最後までキッチリと走ることができなかったのか? 釈然としない疑問は残ります。

それについて、トヨタは以下のように発表しました。

ル・マン24時間レースの最終盤、TS050 HYBRID #5号車を襲ったトラブルは、ターボチャージャーとインタークーラーを繋ぐ吸気ダクト回りの不具合によるもので、これにより、ターボチャージャーの制御が失われた。

まず、ドライバーの中嶋一貴選手が車内で「ノーパワー」と叫んでいた原因は、ターボチャージャーで圧縮した空気を(インタークーラーを通って)エンジンに送り込まれなくなったことだったようです。

一般的なNAエンジン(NA=ノーマルアスピレーションのエンジン)は、大気圧の酸素を含む空気をエンジンが吸うことでガソリンを燃焼させ出力を得ます。この燃焼を効率よくするためにエンジンは空気を圧縮させる工程を経ているのです。

この効率をよくするためには圧縮をたくさんすればいいんですが、上げ過ぎると異常な燃焼、思ったタイミングで燃えないなどの不具合起こしてしまうため上限があります。そのため、吸った空気をどれくらい圧縮するか、つまり圧縮比がある程度に設定されるわけです。

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そのほかにパワーをたくさん出すためには、吸い込める空気量を多くするため「排気量」を増やしてあげ、たくさんのガソリンを燃やすことで可能です。けれど、それでは大きく重くなったりして、逆に効率は悪くなることもあります。

そこで、同じ排気量のエンジンに大気圧よりも高く圧縮した酸素(空気)を送りこんでも排気量を増やすのと同じ原理でたくさんのガソリンを燃やすことができます。

これがターボチャージャーで空気を圧縮してパワーを出す原理です。

しかし、ターボチャージャーでいくらでも高い圧力にして空気を送り込めるかというと、先ほど述べた異常な燃焼が起きるため限界があります。

そこで、ターボエンジンは圧縮比を下げるのが普通です。

今回のケースはターボによる圧縮空気がインタークーラーへ送り込まれなくなったことで、本来ターボ向きとなっているエンジンは同じ排気量のNAエンジンよりパワーが出ないエンジンとなってしまい、とても遅いクルマになってしまった、ということでしょう。

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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