地表から、空へ、そして宇宙へ。グッドイヤーが見据える未来のとは?

「もし、クルマが空を飛ぶようになったら?」、と考えたことのある人、決して少なくないようです。そんな未来の世界に対して期待に胸を膨らませつつも、クルマ好きであれば「タイヤが不要になるなぁ」とつい考えてしまう。確かに路面との接点がなくなれば、タイヤなんて必要ない。駐車する際に支える程度のものがあればよくて、今のような高性能タイヤなんて不要になりそうです。

となると、クルマが空を飛んでしまえば、タイヤメーカーはもう商売あがったりになりそう。それなのに、そんな人類の夢をかなえるのが己の使命といわんばかりに、積極的に未来を創ろうとしているタイヤメーカーがあります。

それがグッドイヤーです。彼らは、自らの1世紀以上もの歴史の中で常に空を見続け、走ることと同じように飛ぶことにも情熱を注いでいたようです。なにしろ航空部門ができたのは1917年。航空機に装着するタイヤだけでなく、飛行機や飛行船自体を生産してきたほど。ちなみに1995年までに約347機を製造したといわれています。1971年には大空をはるか遠く飛び越えて宇宙まで。アポロ14号に積み込まれた人類初の月面調査車には、なんとグッドイヤーのタイヤが使われていたといいます。現在もNASAと共に、月面走行用エアーレススプリングタイヤを研究開発しているそうです。

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アポロ14号の月面調査車にはグッドイヤーのタイヤが装着されました。日向で摂氏150度、日陰ではマイナス120度にもなるという温度環境に加え、過酷な路面状況下の中、命を掛けた乗組員の船外活動を支えたのです。

現在も、航空機の安全な離着陸を支えています。航空機用タイヤは自動車用とは別の性能が要求されますが、軽量合金ビーズ技術などグッドイヤーの最新技術が、それらの要求性能をクリアし、安全な空の旅を提供してきました。

また、これらの技術とは直接的には結び付かないかもしれませんが、グッドイヤーが「空を飛ぶこと」にかける情熱を色濃く感じさせるコンセプトタイヤが、2016年のジュネーブショーで登場しました。その名も「Eagle-360」。既存の概念を大きく覆すかのような球体タイヤ。そこに内包された技術は多種多様ですが、注目すべきは磁気浮上させたこと。球体型であるため、中心軸の回転でタイヤ全体を回すのではなく、磁気浮上の原理を用いて、球体タイヤと車体との間を浮かせながらタイヤに回転エネルギーを与えてクルマを走行させます。

路面との接点こそあれ、車体との接点がなくなった球体型タイヤは、車輪という概念すら覆す大発明。陸上から空へ。月面まで掌握したグッドイヤーならではの画期的なアイディアだといえそうです。これを装着するためには、クルマ側でも大改革が必要となり、すぐに実用化されるわけではないでしょうが、そんな未来のモビリティにはついワクワクさせられます。

ちなみに現在、日本グッドイヤーが掲げているキャッチコピーは「Wings for you.」。「もっと走りたくなる。もっと出かけたくなる。ドライバーにとって翼のような存在でありたい」という意味が込められているそうです。

翼のような存在が、本当に翼になりうるタイヤを作るのも、そう遠い未来のことではないかもしれません。

(中三川 大地)

【関連リンク】
日本グッドイヤー株式会社 「宇宙への挑戦」ページ
http://www.goodyear.co.jp/universe/