ホンダの自家用水素ステーションは最新の燃料電池車を満タンにできない!?

ホンダから、燃料電池車「クラリティ フューエルセル」が登場したのと同時に、企業などが自社の燃料電池車に向けた小型水素ステーション「SHS(スマート・ハイドロゲン・ステーション)」も発表されました。

岩谷産業との共同開発によって生み出されたSHSは、工場でユニットを完成させて出荷するほどコンパクトにまとめることで、設置の工期やコストを抑制できるのも特徴。すでにホンダの青山本社ビルをはじめ、地方自治体などでも運用がはじまっています。

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高圧水分解システムにより水電解時に水素を直接高圧化することで、水素ガスを圧縮するためのコンプレッサーをなくしていることも特徴といえるSHSですが、その製造圧力は40MPa、充填圧力は35MPaとなっています。

一方、ホンダ・クラリティ フューエルセルやトヨタMIRAIといった最新の燃料電池車のタンクは、商業水素ステーションのスタンダードとなっている70MPaに対応したもの。

つまり、商業水素ステーションで満タンにしてから、ちょっと走った程度の状態では水素タンク内の圧力が高く、35MPaとなるホンダのSHSでは充填することができないのです。

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おおよその目安としては、最低でもタンクの6割程度まで水素を使った状態からでなければ充填できないといいます。また、充填圧力が低いため、タンク内の残量が少なくても満タンまでは充填できないのも、SHSの仕様となっているのです。

もっとも、高圧充填に対応するにはコストも上がり、ユニットも大きくなる可能性があります。

あくまでもSHSは自社内で数台の燃料電池車を運用しているようなシチュエーションを前提としているため、一日の水素製造能力は1.5kg、充填圧力35MPaを選択したということです。

ちなみに、現在は諸条件を満たせば設置において国から補助金が出るというSHSですが、補助金を考慮しても3000万円~の設置予算が必要といいますから、まだまだ水素でクルマを動かすというのはハードルが高いと感じさせます。

(写真・文 山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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