徹底解説!新型クラウンに採用されている2.0L直噴ターボエンジンの開発コンセプトとは?

「高熱効率」は、ターボ専用にD-4ST(筒内直噴+ポート燃料噴射装置)を開発し、シリンダーのポート形状、ピストンの頂面形状(冠面形状)を工夫。圧縮、膨張工程で高タンブル(速い縦渦)により高速燃焼を実現しています。

crwa1510_40_sまた、インジェクターも運転状況に応じて1〜3回噴射するなど、こまめに制御することで燃費と走りを両立。

吸・排気の連続可変バルブタイミング機構の「Dual VVT-i」も改良されていて、吸気側の遅角、進角両方とも送れるにようになり、低負荷時はアトキンソンサイクルも併用することで燃費と出力を向上させています。

また、世界初となるシリンダー一体型のエキマニとツインスクロールターボの組み合わせの狙いは「冷却性能」にあるそう。

エキマニをシリンダー(水冷)で冷やすことにより、冷えた空気をツインスクロールターボに入れて排気干渉させることなく、スムーズにターボを回しています。

さらに冷却系では、ターボとインタークーラーを専用に冷やす冷却系を別にもっています。水冷にこだわるのは、ストップ&スタートの多い日本の交通事情に合わせたもので、空冷よりも水冷の方が効率的に冷やせるのは当然でしょう。

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インタークーラーもエンジンに直付けすることにより吸気のレイアウトもコンパクトになり、冷えた空気を効率良く吸気系に送り込めるというコンセプトが採用されています。

また、ターボエンジン特有の「オイルが劣化したり減ったりするのが早い」という点に対しては、オイルのメンテナンス性に注力。

この直噴ターボ(8AR-FTS)は、NAエンジンと同じメンテナンスですむのがポイント。インジェクターのスリット形状を工夫し、噴霧を拡散させ、短くすることで筒内への付着を少なくしてオイルの劣化を防いでいます。

また、直噴とポート噴射の使い分けでは、冷間時では未燃焼燃料を低減する工夫も採用。

裏からオイルを噴いてピストンを冷やしていましが、従来のエンジンのように噴きっぱなしではなく、電子制御により冷間時と低負荷の領域ではオイルジェットを止めて無駄なオイルを使わない工夫も盛り込まれています。

さらに世界初として、インジェクターを使った換気システムも採用。

ターボエンジンの場合、筒内の圧力が非常に高いためブローバイガス(未燃焼ガス)がクランクの方に落ちてきますが、ブローバイガスによりオイルが劣化してしまうため、強制的に喚起するシステムを構築。圧縮した空気に細いノズルを通して速い流速を使ってブローバイガスを吸引するというものです。

(文/塚田勝弘・写真/佐藤靖彦)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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