3.0LのV6スーパーチャージャー(333ps/440Nm)を搭載するA7スポーツバック、4.0L V8ツインターボ(450ps/550Nm)を積むS7スポーツバックには試乗済みでしたが、560ps/700Nmを積む4.0LのV8ツインターボのRS7は初体験でした。
なお、528ps/680Nmというスペックのベントレー・コンチネンタルGT V8 Sにも4.0L V8ツインターボが搭載されていて、RS7、コンチネンタルGT V8 Sともに気筒休止システム(低負荷時に8気筒のうち4気筒を休止させる)が搭載されるなど、現代的なエンジンとなっています。
450ps/550NmのS7スポーツバックでも圧倒的なトルクとどこまでも伸びるようなパンチ力のある加速フィールが得られますが、560ps/700Nmは暴力的といえるような動力性能。
「ドライブセレクト」はエコモードの「自動」のままで全域カバーできるのはもちろんで、「ダイナミック」が必要(実用上)とするシーンは公道では考えられません。
また、気筒休止システムの作動もドライバーに察知させることはほとんどなく、どう猛なだけでなく、これだけのハイパワーでも「普通」に乗れるのは、アウディらしいところ。
しかし、「ダイナミック」にして高速道路で流れに乗った速度域でもラフに加速すると、高めの速度域でもホイールスピンしながら再加速するような具合ですから、サーキットで全開にするにしてもショートコースのような小さなステージではその性能をすべて解き放つことは無理でしょう。
これだけ速いとブレーキ性能も気になりますが、高速時に急制動に近いシーンでもフィール、効き具合ともに瑕疵を感じさせることは皆無でした。
アルミと高張力鋼板のハイブリッドボディ、シャーシにもアルミを使うなどして軽量化されていますが、車両重量は2050kgと大台に突入していますし、5m超の全長、1.9mを超えたワイドなボディですからフットワークも気になりますが、街中では意外と軽めのパワステ、そして高速域でも重量のある4WDであるのにも関わらず思いのほか軽快に走ってくれます。
それでもタイトなワインディングでは、ややノーズの重さも感じられますが、最も得意とするステージである高速道路の巡航時は、超ハイパワー4WDでも万全のスタビリティで淡々と、ときには熱く走破してくれそう。
乗り心地も思ったよりも良好なのには驚かされますが、スタイリングやブランドに惚れて指名するはずのモデルだけに驚愕的な動力性能などは、「それぐらい当然でしょう?」と片付けられそうなモデルに仕上がっています。
(文/塚田勝弘・写真/小林和久)