バリバリと音を立てて現れた怪物は、左ハンドルなうえに7速MT。
すっかり弱気になったワタクシに追い討ちをかけるかのごとく、最初の交差点では重めのクラッチとソリッドなアクセルレスポンスにビックリしてエンスト……。
幅広なボディも街中では運転しづらいし、足回りも硬く、路面が悪いところでは腰にガンガンと衝撃が伝わってきます。
一刻も早く降りたい衝動に駆られるのですが、軽量かつ高剛性なボディによる軽やかでクイックなハンドリングや、コーナーの立ち上がりやストレートで見せる怒涛の力感など、しばらく走っているとその気持ち良さが段々と病みつきになっていきます。
さらに、スピーカーによる作りモノではなく生音!!の豪快なエキゾーストノートも合わさることで、先述した難点を忘れてしまうほど走りの気持ち良さに夢中になっていました。
高速道路でも楽しさは増すばかり。さらに上の速度領域にこそこのクルマの醍醐味があることを同時に予感させます。マニュアルトランスミッションを駆使してエンジンの美味しい部分を使っても、あっという間に制限速度に達してしまうほど。手加減するのも難しければ、性能を発揮できないことへのフラストレーションも溜まってきます。
が、街中でこの一線を越えたら最期なのでしょう。
最初は不満だらけだったこのクルマ。気付けば2時間ほどドライブしていました。
クルマを降り、タイトなバケットシートで型にハマってしまった身体を思いっきり伸ばすと、疲労感や恐怖よりもむしろ「良い運動をしたなぁ」という爽快感の方が強かったです。
1380万円というプライスはスーパーカーの中では破格ですが、「Z06」は公道ではその実力の片鱗の片鱗しか味わえないうえに、サーキットに持ち込んでも相応のテクニックが求められるはず。
そうなると、フツ―の「コルベット(942万円~)」でも十分なのかもしれません。ただ、腕に自信のある方や日常に刺激がほしい方は、この美味い毒を味わってみてはいかがでしょうか?
(今 総一郎)