自動運転に対する法律的な規制については、1968 年に締結されたウィーン交通条約で、欧州における自動運転を厳しく制限しています。同条約では、「すべてのドライバーは、常に車両を制御化に置くこと」を求めていますが、その解釈は国によって異なります。このため、欧州では同条約を修正して欧州全域を網羅する法的枠組を作り出そうという試みが進められていますが、すべての国の法規制を満足させることは難しいのが現状です。
ECE(欧州経済委員会)規則79 では、最高速度12 マイル/時(時速約19km)まではハンドル操作の自動化が認められていますが、これは半自動パーキングシステムには十分に対応可能な速度域ですが、渋滞時や高速道路の運転支援システムには不十分な速度域となっています。
また、カリフォルニア、フロリダ、ネバダ、ミシガンといった北米のいくつかの州では、すでに自動運転車両の使用が認可されていますが、基本的に米国運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は慎重なアプローチを採っており、試験走行や調査目的以外の公道での自動運転車両の使用を推奨してはいません。
日本においては、2013 年9 月に政府が高度運転支援技術を搭載した車両に対し、初めて自動車検査証とナンバープレートを発行し、公道における自動運転車の試験走行が公式に認められたという実績があります。
今後に向けてTRWでは、世界中の数多くの自動車メーカーと連携し、自動運転の実用化に向けた取り組みを進めていますが、依然として多くの課題も残されています。法制面の整備が必要とされる一方、自動車メーカーと自動車部品メーカーは、自動運転の主要技術と全方位を検知できる360 度センサーの開発において飛躍的な進歩を遂げています。
そして、法規制とインフラ面の課題が解決した後、最終的には消費者の実際のニーズに対応する必要があります。消費者の期待に応え、自動運転への理解を促進し、その価値が広く認められるようにすることが今後の課題となることが予想されます。
(文:山内 博/写真:TRW Automotive)