燃料電池開発が大きく飛躍?水素貯蔵が容易になるギ酸触媒の開発に成功!

 次世代エネルギーの有力候補のひとつとして研究がなされている水素。ホンダのFCXクラリティなど燃料電池車のエネルギー源は水素です。

水素は常温では気体です。燃料電池車や水素エンジン車などで水素を貯蔵する場合は、超高圧にして溜め込むか、金属に吸着させる方法が一般的です。ホンダのFCXは超高圧タンク、マツダの水素ロータリー車は金属吸着で主に開発を行っています。そのどちらも一長一短で、超高圧タンクは軽量ですが容積あたりのエネルギー密度が低く、金属吸着はコンパクトですが重いのです。

そんな水素の貯蔵方法に革新的技術が登場しました。水素と二酸化炭素を反応させて作り出す「ギ酸」を使う貯蔵方法です。

水素分子(水素原子2個)と二酸化炭素分子で作り出すギ酸は常温で液体です。この状態で水素を貯蔵し、必要なときに水素を取り出すことが出来れば、貯蔵問題は一気に解決します。

そんなギ酸から水素を取り出す、また水素と二酸化炭素からギ酸を作り出す、という触媒が産業技術総合研究所の太陽光エネルギー変換グループ 姫田 雄一郎 主任研究員らによって開発されました。

■二酸化炭素とギ酸を相互変換するエネルギー効率の高い触媒を開発(独立行政法人産業技術総合研究所)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120319/pr20120319.html

上記のプレスリリースを読んでも難しくて困る、という方もいらっしゃると思いますが、つまりは液体での貯蔵により水素が容易に取り扱えることが重要です。そしてもう一点はすでに大気中に放出されている二酸化炭素を有効に再利用できること。つまり、二酸化炭素ですら「燃料」になるというものです。

今回開発された触媒が実用化されると、水素の利用は一気に現実味を帯びてきます。それこそ燃料電池車で一番コストがかかる部分が解決されるとなれば、現在の電気自動車を越えた利便性をもたらすものだ、と考えられるのです。

太陽光や風力以外の新しいエネルギー勢力として水素が重要な位置を占めるであろうことは明白です。なにせ水素は宇宙全体で一番大量に存在する元素なのですから。

(北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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