問題:最近のクルマはヒール・アンド・トゥができない。マルかバツか?

先日の記事「レヴォーグの加速を最速にできる裏ワザがあった!」では多くの反響をいただきありがとうございました。ただ、その反響を見ていてひとつ気になったのは「ローンチコントロールでしょ?」という反応があったこと。いや違うんですよ。

一般的なローンチコントロールはスタートダッシュの際にエンジン回転やクラッチの繋ぎをコントロールするわけですが、レヴォーグは加速を鋭くするためにCVTのシフトプログラムを変更してS#でも段つき制御せずに無段階変速にするのです。ご参考までに。

さて、今回もそんな裏モードに関してちょっとした小ネタをお話しましょう。

みなさんはMT車好きですか? 僕はMT車を所有するほど大好き。ヒール・アンド・トゥでシフトダウンがスッと決まったときなんて何ともいえない爽快感ですよね。

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ところが、最近のクルマにはだいたい「ブレーキオーバーライド」と呼ぶシステムが備わっています。これはブレーキとアクセルを同時に踏んだ場合にブレーキ操作を優先して、エンジン回転を抑えるというもの。意図しない加速を防ぐ安全システムです。

ってことはですよ、アレができない可能性があるのです。ブレーキとアクセルを同時に踏む「ヒール・アンド・トゥ」が……。どうしてくれるんだ、MT車なのにヒール・アンド・トゥが使えないなんて。クリー●を入れないコーヒーみたいじゃないか! もうMTを買う意味なんてない! うぉーーー!!

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……という心配は、実は不要。

最新のクルマでもヒール・アンド・トゥはちゃーんとできるんです。各社によりブレーキオーバーライドのシステム構成は異なりますが、単純にアクセルとブレーキだけの関係だけではなくいろんな要素をを含めて制御していて、ヒール・アンド・トゥの際はアクセル操作を受け入れるように作られているのだとか。安心して大丈夫なのです。これからも「ヴォン!」と音を立てながらシフトダウンできますよ!

某メーカー(写真は関係ありません)のエンジニアによると、「ヒール・アンド・トゥが必要と思われる状況になるとブレーキオーバーライドが働かないモードに入るようにしてある」とか。

今どきのクルマは安全が最優先で、もちろんそれは素晴らしいこと。しかし、運転を楽しむ人のこともしっかり考えているという一例ですね。特に最近は、MTに乗るのはよっぽどのクルマ好きかただの変態。でも、そんな人たちに乗ってもらうからこそ、安全は最優先という何よりの前提がある中で楽しさをスポイルしないようにメーカーや開発スタッフは工夫しているというわけです。

以上、「ヒール・アンド・トゥってなにそれ? 流行っているの? だいたいMTってなに? クラッチってチョコのお菓子か何か?」という人にはまったく関係のない話でした。それでは今週もがんばりましょう。

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「レヴォーグの加速を最速にできる裏ワザがあった!
https://clicccar.com/2014/08/12/264512/

(工藤貴宏@ヒール・アンド・トゥにはペダルレイアウトも大事だよね)

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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