円安で自動車輸出が増えても貿易赤字が増大する訳とは?

財務省によると、11月度の貿易収支は▲1兆2929億円と2ヵ月連続の赤字増となっており、1979年以来3番目の大幅赤字となっているようです。 

これまでの統計では2013年1月の▲1兆6,335億円、2番目が2012年1月の▲1兆4,907億円で、赤字が2ヵ月連続で1兆円超えとなったのは初めての事と言います。

これにより、2013年度1~11月の累積赤字額は10.2兆円規模に。 

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11月の輸出総額は5兆9,005億円(同+18.4%増)と9ヶ月連続で増加しているものの、同時に輸入も7兆1,933億円(+21.1%)と13ヵ月連続で増加している状況。 

一般的には円安が進めば輸出による収益が増大することから輸出が増加傾向となり、貿易収支が黒字化に向かう訳ですが、アベノミクスで円安傾向となった本年の貿易収支は昨年以来、17ヶ月連続で赤字が続いています。 

これを輸出先別にグラフ化してみると以下となります。 

00下向きの棒グラフが貿易収支を示しており、赤字収支となっている原因が特に中国からの輸入(前年同月比+19.4%)が多いことを物語っています。 

中国からの輸入を押し上げている品目は電算機類(同+40%)や通信機(+21%)、衣類(+15.6%)などで、確かに今では国内生産品を見つける方が難しい状況。

また欧州からはVWなどの輸入車も+7.0%増と寄与。 

一方、11月度の自動車輸出総額は+30.1%増となっており、北米向けの台数(前年同月比+15.8%)が最も多く、アジア、中近東、アフリカ向けの輸出も伸びています。 

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(出展 日本自動車工業会) 

現地生産化が進んだことで、国内主要自動車8社を合わせた国内生産率は「36%」と低いものの、それでも11月単月の輸出実績は自動車部品を含めて前年同月比+6%増となる132.3億ドル(約1.3兆円)を計上。

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11月度の輸出総台数は41.6万台(前年同月比+8.5%)で小型車よりも特に普通乗用車の輸出が+20.1%と伸びている状況。

またメーカー別の11月度輸出台数では首位がトヨタ、2位がMAZDA、3位がスバル、4位が日産、5位が三菱となっており、2位以下の伸びが顕著。 

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前述のとおり、海外生産が大半を占めている自動車関連の輸出総額が現状でも単月で1.3兆円以上に達していることから、理論的には平均で138万台/月に上る海外生産の一部を国内生産に戻して輸出額を増やせば貿易赤字1.3兆円の解消が可能。 

しかしながら昨年までのような超円高が続けば、あっと言う間に利益がふっ飛ぶだけに、円安になったからと言って各社が今さら生産を国内に戻す筈も無く、他の品目で輸出を増やす以外に赤字解消は難しい状況。 

従ってこうした赤字状況はまだ当分続くことになりそうです。 

■財務省 11月度貿易統計(PDF資料)
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2013_11.pdf 

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 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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