軽自動車のハイトワゴン市場は、強敵ワゴンRやムーブが棲む最大にして激戦区。ホンダはハイトワゴンのド真ん中に向けて、絶好調のNシリーズから新規に「N-WGN」を投入しました。しかもこの困難極める開発には、センタータンクレイアウトを知り尽くした「フィット」の開発責任者を抜擢! 新型N-WGNは「ガラ軽」から抜け出すべく、思い切った新機軸で登場したのです。
■フィット愛から軽自動車愛へ! キーワードは「最強欲張りハイトワゴン」
開発責任者の人見LPLは、フィットの開発責任者を歴任した「ミスター・フィット」と呼ぶべき方。それにしてもグローバルコンパクトの次に、国内激戦の軽ハイトワゴンを任せるのですから、ホンダも思い切った人事をやるものです。人見LPLは開発コンセプトを「最強欲張りハイトワゴン」に設定。従来の「安かろう・しかたなかろう」の「ガラ軽」から離脱して、実質本意の品質と使い勝手を徹底的に追求しました。そして新型N-WGNは、使い込むほどに満足と愛着が膨らむ上質なベーシックカーに仕上がったのです。
■Nシリーズを基盤に思い切った新技術を追加
Nシリーズではコスト低減と効率化に向け、プラットフォームの共有化を推進してきました。新型N-WGNでも、重量比でなんと90%の共有化を達成しています。また進化も目覚ましく、エンジンはツインインジェクションとナトリウム封入バルブの採用により、ドライバビリティと燃費を向上。特にナトリウム封入バルブに至っては、日産の名機RB26DETT(スカイラインGT-R)と同じ技術ですゾ〜。この思い切ったメリハリが、低コストと高品質を両立する源となっているのです。
新型N-WGNのスタイルは、バンパーやリアランプの造形に、神社の鳥居のような上広がりのモチーフを取り入れて、新しさと室内の広さを表現しています。カスタムのドヤ顔はお約束ですが、標準車の押しの強い表情も印象的。インテリアでは、リアシートにスライド機能を採用して、リアの居住性と荷室の使い勝手を大幅に向上。センタータンクレイアウトの新たなスペース活用を提案することで、デザインコンセプトの「最強欲張りパッケージ」を具現化したのです。
新型N-WGNの開発で一番驚いたのは、リアシートのダイブダウン収納や座面チップアップをあえて廃止し、スライド機能と荷室を確保するパッケージングに切り替えたこと。センタータンクレイアウトの強みをあえて転換するなんて、なかなか出来ることではありません。まさにセンタータンクレイアウトを知り抜いた人見LPLなればこそ。開発コンセプト通りの最強欲張りぶりを発揮する新型N-WGNは、ハイトワゴン市場の台風の目になりそうです。
(拓波幸としひろ)