TPP交渉が開始されてこれまで日米間で合計3回に渡る「自動車交渉」の場が持たれて来ました。しかし米国側のその後の要求に日本側は応じておらず、交渉は平行線に終わっているようです。
<TPP締結のメリットは輸入関税の撤廃>
米国が日本車を輸入する際にかけている関税(輸入品に対して通関時に徴収される税で財政上の重要な収入源)は乗用車が「2.5%」、トラックが「25%」。
日本政府は今年4月の日米2国間事前交渉で、「TPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、且つ最大限に後ろ倒しされる」との合意事項が示すとおり、上記関税の撤廃交渉で米国側に大きく譲歩しました。
その背景には日本車が米国新車市場で約40%の大きなシェアを占めており、2013年度は累計で約481万台を販売するなど、人気を博している現状に起因しています。
ちなみに米BIG3(GM、フォード、クライスラー)の同期間に於ける販売台数は3社合計で約592万台でシェアは約46%の状況。
米国市場での日本車販売台数・シェア
(2013年1-10月末累計)
トヨタ 187万台 14.4%
ホンダ 127万台 9.8%
日産 103万台 7.9%
スバル 35万台 2.7%
MAZDA 24万台 1.8%
三菱 5万台 0.4%
スズキ 撤退済み
米市場全体 1300万台
日本車メーカーは品質の高さや燃費の良さをウリに米国進出を果たした後、工場を米国にどんどん移転させて大量生産することで販売台数を伸ばし続けている訳ですが、一方的に相手市場で売りまくるだけでは米国側の反感を買う為、日本はそうした事に配慮して交渉で妥協の姿勢に出たフシが有ります。
<米国の立場は?>
米政府は逆に日本企業の自国内での活躍で大きな雇用が生まれており、今では持ちつ持たれつの関係なので、かつてのように日本車を締め出す訳にも行かず、もっぱら米車メーカーから苦情を受ける微妙な立場。
米車メーカーはリーマンショック以降、経営が破綻、政府からの援助で何とか本格復旧を果たしたところですが、既に自国の市場が日本車に占有されている状況の為、日本とのTPP締結で更に日本車に市場を奪われる事を警戒しています。
そこで米車勢は一定の市場シェアを守る為に、日本から入って来る輸入車だけでも関税撤廃を遅らせるように米政府に圧力をかけているのが実情。
ともすると、メディアでは我がままな米国像ばかりがクローズアップされがちですが、米国側にも言い分が存在。実際には米車勢が日本とのTPP締結に激しく反対しているというところがポイントなのです。
おりしも読売新聞(11月5日付け報道)によると、米国が日本車にかけている輸入関税の撤廃を5~10年後とする日本側に対して、協定発効から20年程度先となる公算が強くなったとしています。
これも今やデフォルトの危機に晒されている米国側にすれば精一杯の防御なのかもしれません。
米政府は交渉で日本へ米車を輸出する際の日本の安全基準や環境基準の緩和を強く求めていますが、日本で米車が売れないのは販売努力や魅力が不足している事が主因。
日本は欧州車に対してもそうであるように、輸入関税すらかけていません。
米政府の今回の要求は米車勢の言い分(日本で米車が売れないのは非関税障壁が原因)を代表しているのは明らかですが、恐らくこの障壁撤廃要求を日本に飲ませたところで急に日本で米車が売れるとも思っていない筈。
本音の程は判りませんが、自国の自動車各社から要請を受ける立場上、政府としては日本へ働きかけざるを得ない状況になっているのかもしれません。
今後の両国間の交渉の行方が注目されます。
■外務省 TPP関連 Webサイト
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page3_000508.html
〔関連記事〕
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