新型フィットに見る、ホンダ・デザインの2トップが目指す革新とは!?

発売約1ヶ月で6万台を超える注文を集めた新型フィットは、歴代ホンダ車の中でも記録的なヒットとなりました。卓越したハイブリッドの燃費性能もさることながら、初代・2代目の大好評デザインを思い切って一新したことも、メガヒットの要因といえるでしょう。そしてその背景には、ホンダ・デザインの2トップによるデザイン体制の改革と、S500とT360まで遡るデザインコンセプトの原点回帰がありました。

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■エクステリアとインテリアの2トップ体制

これまでホンダは、デザイン責任者を車種やカテゴリー毎に配置したため、個性豊かなクルマが誕生する反面、デザインテイストやトレンドはバラバラで、ホンダブランドとして一本筋を通すことができませんでした。しかもリーマンショックの時には、コスト重視でデザインされたUSシビックが大不評となり、デザイン部門にショックが走りました。そこでホンダはデザイン部門の改革を断行するべく、エクステリアとインテリアの責任者に、ホンダ全車種を掌握する権限を委譲。そして「エキサイティング・H・デザイン」という、HONDAのHに「ハイテック・ハイテンション・ハイタッチ」を込めた熱いデザインテーマを打ち出し、2トップによるマネージメントをスタートさせたのです。

■エクステリアデザインは、「作家的な個人の戦い」!

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エクステリア責任者の南GCD(グローバル・クリエイティブ・ダイレクター)は、「スタイリングではなく、コンセプトありき、パッケージングありきでデザインするのがホンダの基本」「ホンダはS500とT360で四輪事業を始めた会社。運転して楽しいクルマも、使って楽しいクルマもどちらもやっていきたい」とコメント。これぞまさしく「ホンダデザインの原点回帰」ですゾ! 更にデザイン体制では、フロントA案とリアB案を合わせるといった従来の合作制を廃し、個々人による競作制を導入しました。つまりデザイナーの一人ひとりが「ジウジアーロでありピニンファリーナたれ!」ということなのですね。「作家的な個人の戦い」から産み出されるセンス溢れるエクステリアに、大いに期待したいと思います。

■インテリアは「コミュニケーション重視」のワイガヤ体制!

インテリア責任者の朝日GCDは、前職で大不評だったUSシビックのインテリアを一年でやり直して、人気を回復させた「凄腕」の持ち主。インテリアのデザイン体制で興味深いのは、「コミュニケーション重視」のチーム体制を組んでいること。インテリアは、デザインのみならず使い勝手や視認性、素材や質感・コストなど、デザイン要件が多義に渡るため、ワイガヤ的なチーム力がモノをいうのでしょう。何よりエクステリアとアプローチが真逆なのが、いかにもホンダらしいところですよネ。

新型フィットのデザインは、実は大変な難産で、内外装とも締切間近にデザインコンテストが実施されたほどでした。これはつまりホンダの基幹モデルのデザインが、土壇場で「ちゃぶ台返し」をくらったということ。こんなハイテンションで全車種取り組んでいたら、心臓がいくつあっても足りないんじゃないかしら・・・。という余計なお世話はさておいて、ワンダーシビック等のホンダ80年代デザインに憧れて入社したお二人には、是非とも感性豊かなデザイナーを育成して、「ドキドキ・ワクワク」するデザインを産み出して欲しいと思います。

(拓波幸としひろ)

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