前回の試乗記でお伝えしたとおり、10kgの軽量化で思いのほか軽快なフットワークを披露してくれたフォルクスワーゲンの新型ゴルフGTI。今回はさらにWレーンチェンジやスラロームなど、緊急時の挙動を探る特設コースでの印象をご報告します。
まずシャーシですが、フロントサスペンションは10mmダウンのスポーツサスで、高強度鋼のロワアームや完全中空式アンチロールバー、リヤは4.0kgの軽量化と高強度鋼の採用で剛性もしっかり確保するなど、基本的な性能の高さも光ります。
ですが、注目はなんといってもコーナリング中のアクセルオン時、内側のタイヤにブレーキをかけてアンダーステアを軽減する「XDS+(プラス)」とASR(トラクションコントロール)の停止、ESCの介入を緩やかにする「ESC Sport」の設定。
富士スピードウェイのショートコースでは腕不足で限界はまったく探れませんでしたが、Wレーンチェンジとスラローム、S字コーナーが用意されたふたつの特設コースではその威力を実感できました。
全開加速からフルブレーキングのブレーキングポイントに突入する「Active Safety」コースでは、信じられないほどの安定感でWレーンチェンジをクリアし、さらにふたつ目のWレーンチェンジでは、アクセルオフという最も安定性を欠く姿勢でステアリングを切ってもコースオフやスピンの気配すらありません。
スラロームと大きなS字コーナーが続く「Vehicle Dynamics」の体感では、前後内輪のブレーキを調整する「XDS+(プラス)」の威力をまさしく体感し、効果は絶大でアンダーが出そうなS字コーナーでも「おー」と間抜けな声を出したくなるほどグイグイと曲がっていきます。
また、「ESC Sport」の搭載により、サーキットなどではトランクションコントロールをオフにできるだけでなく、ESCの介入を緩やかになるのも確認でき、ある程度スライドを楽しめるなど、腕に覚えのある人がより楽しめるようになっているのも新型GTIの魅力。
しかし、私のようなドライバーにとってうれしいのは、安全に速く走破できるだけでなく、電子制御の存在を感じさせないナチュラルなハンドリングやスタビリティを享受できること。スポーツ走行からグランドツーリングまでゴルフGTIが1台あれば何でもこなしてくれます。
ピュアスポーツ度を高めながらも万能スポーツハッチであるGTIの真価はより深まっていますし、新型GTIは間違いなく史上最高のGTIに仕上がっています。あとは、ショートコースで雨が上がり、路面が乾くとタッチも利きも甘くなったブレーキを強化すれば文句なしでしょう。
(塚田勝弘)