STIバージョンはなぜ限定生産なのか?

前回「スバルSTIはなぜこうも安くいいクルマができるのか?」というのをお伝えしました。

WRX STI tS TYPE RA_012

「で、スペックからするとお買い得なこともわかるけど、乗ってホントにいいのか?」とお思いになりますよね。そういうわけで、さっそく「WRX STI tS TYPE RA」に乗ったときの印象をお伝えしましょう。

まず最初に乗ったのは、撮影のためです。

WRX STI tS TYPE RA_002撮影するため、伝統ある施設の駐車場のため、すでに舗装がアレ気味で路面がよろしくない場所でまず動かします。

「まあ、チューンドカーみたいなもので、多少はゴツゴツするんだろうな」と想像して動かすと、いや、そうでもない。というより、そんなシーンだからこそ、柔らかくないバネながら、最初の一瞬からダンパーが働いている感じがあって、突っ張り感がまったくありません。足を固めたクルマにありがちなヒョコヒョコした動きなんて皆無です。

それはさらに撮影のために持ち込んだ未舗装路の凸凹でも感じられます。

まあ、低めの車高とリップスポイラーが装着されているので、そんな道じゃない場所ではちょっと気を遣いましたが、10km/h以下でもしなやかなのがわかります。

仕事柄、撮影のためにクルマの向きを変えたり、狭いところで車両を交わしたりすることが多いので、「ハンドルの切れ」に対しては敏感です。

その点、クイックなギア比を持たせたステアリングのおかげで駐車場での切り返しも1回くらい少なくて済むかも、という印象ですが、この狙いはそこじゃないので後ほど。

ちょっと山道方面へ出掛けてみました。

WRX STI tS TYPE RA_003上り坂がトルクフルでラクチン。ガッツリ四輪が地面を捉えてるのが手に取るようにわかる気がします。全体的な速度域も相当高めをキープでき、「思った通り」に少しだけプラスして「思ったよりちょっとだけ」早く切れ込んだり、曲がってくれたりする気がします。

が、これは違和感ではなく、気持ちいい範囲に微妙に収まっているところが流石です。

でも、クイックなステアリングって聞くと、高速での安定性が気になりますよね。

でも、そんな心配はまったくと言っていいくらい不要です。高速道路でレーンチェンジするくらいのハンドル切れ角ではクイックな印象というより、ステアリングに忠実に反応する感じが強めに出る印象でしょうか。

ただし、高速だろうが一般道だろうが楽しいからって速度の出し過ぎには注意が必要です。これもクイックなギア比が善くも悪く(?)も、一役買ってる思います。

STIバージョンはお得感があって、ヘタしたら発売前から完売という、ここ最近にないほどの自動車業界における人気っぷりなわけです。

じゃあ、結果すぐに完売となってしまうようなら300台と言わず、もっと作ればいいのでは?と自然に思います。

しかし、300台というのはこのクラスの国内市場でけっして小さい数字ではなく、必ずしも「売り切れ必至」とまでは言えないそうです。

それに、半年くらいのペースで売り切って、次の進化を始める必要があるんだそうです。確かに、その時点のベストをずーっと作り続けるのはある意味退化に近いかもしれません。

スバルは年改(イヤーモデルチェンジ)で毎年同じように見えて少しずつ進化を続けるメーカーです。そのR&D部門はより大きな進化も求められるわけで、そういう意味では短期間に売り切る商品ラインアップは、もったいぶりでも自信のなさでもなく、必然から生まれたものだったようです。

ということは、すでに完売となったこのモデルを買えなくても、また再びこれを超えるモデルが出てくるはずです。もし買えなかって人にとって、クルマを買うタイミングは様々ですが、二度と買えないと思わず、次にもっといいものが出てくるのを楽しみに待つのもいいんじゃないでしょうか。

 (小林和久)

車名・型式 スバル・CBA-GVB
車種 WRX STI tS TYPE RA
寸法・重量・定員 全長×全幅×全高(mm) 【参考値】 4605×1795×1465
室内長×室内幅×室内高(mm) 1985×1475×1200
ホイールベース(mm) 2625
トレッド[前/後](mm) 1535/1545
最低地上高(mm) 145
車両重量(kg)【参考値】 1450 
乗車定員(名) 5
車両総重量(kg)【参考値】 1725 
性能・ステアリング・サスペンション・ブレーキ
最小回転半径(m) 5.5
ステアリング歯車形式 ラック&ピニオン式 ステアリングギヤ比 11:1
サスペンション[前輪/後輪] ストラット式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架 主ブレーキ形式 2系統油圧式(倍力装置付)
ブレーキ[前/後] ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
駐車ブレーキ形式 機械式後2輪制動
エンジン 型式・種類 EJ20 水平対向4気筒 2.0ℓ DOHC 16バルブ デュアルAVCS ツインスクロールターボ
内径×行程(mm) 92.0×75.0
総排気量(cc) 1994
圧縮比 8.0
最高出力[ネット][kW(PS)/rpm] 227(308)/6400 最大トルク[ネット][N・m(kg・m)/rpm] 430(43.8)/3200
燃料供給装置 EGI(電子制御燃料噴射装置:マルチポイント・インジェクション)
燃料タンク容量( ℓ ) 60
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン 
トランスミッション 変速機形式 6MT:前進6速 後退1速
変速比(第1速) 3.636 変速比(第2速) 2.375 変速比(第3速) 1.761 変速比(第4速) 1.346 変速比(第5速) 1.062 変速比(第6速) 0.842 変速比(後退) 3.545 減速比 3.900

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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