「人生の3分の1は睡眠の時間である」とはよく聞きますが、最近では、スケート界の女王も愛用している疲労を軽減させる新発想のベッドがリリースされ、大人気ですね。寝具の進化は日々すすんでいます。
さてクルマに乗っているほぼすべての時間を一緒に過ごすのがシート。ここにもダイナミックな革新の予感があります。
先日開催された、自動車用シートの世界コンペティション。ここで日本のシートメーカーが特別賞に輝きました。
主催したのはBASFというドイツのメーカー。一般にはあまりなじみはないかもしれませんが、世界最大の化学メーカーです。特別賞を獲ったのは、トヨタ自動車のパートナー企業である「トヨタ紡織(ぼうしょく)」。最近ではトヨタ86のシート開発を担当、その高い技術力には定評のあるメーカーです。
世界34カ国から170作品が出展されるなか激戦を勝ち抜き、特別賞3作品の中に選ばれたのが、この「Aptus」(アプタス)というコンセプトのシート。
デザインはまるで高級オフィスチェアーのようですが、特筆すべきは身体にフィットさせる構造の斬新さ。背もたれの部分が、横方向に動くようになっています。これで、体型の大小にかかわらず、ジャストフィットさせることが可能に。
さらに、座るたびリクライニング調整する必要がないのもトピックス。座った際の体重を感知、適正な位置で自動的にロックをしてくれます。
デザインでは、素材の機能性をあえて可視化しているのがポイント。「シートフレームにクッション材を貼り、それを生地で包み込む」という自動車シートの概念を覆し、シートフレームをあえてむき出しにしています。軽量化のため、無駄な部分を徹底的にそぎ落とされた潔いデザインがかなり未来的。
両社は、共同開発という形で実現に向け動き出したようです。関係者によれば「2013年中に試作を完成させお披露目したい」とのこと。
シートの重量を削ることは、車体の軽量化にダイレクトに影響が出るポイントであり、燃費向上にも効果絶大。スポーツカーのドライバビリティ性も大きく左右します。トヨタ紡織のこれからの動きに注目です。
※画像はトヨタ紡織ホームページより http://www.toyota-boshoku.com/
(畑澤清志)