日産と三菱自動車工業の合弁企業NMKVにより企画、三菱自動車工業が開発・製造を担当する話題の新型軽自動車「日産デイズ」、「三菱eK」がついにデビュー。カタログスペックでは全高1600mm級のトールワゴンではクラストップとなる29.2km/L(JC08モード)という燃費性能を実現したことでも話題のニューモデルです。
この「eKワゴン」の開発を担当した、三菱自動車工業・開発本部のエンジニア氏に、燃費性能に関する話をうかがうことができました。
省燃費にはエンジンだけでなく、ボディの軽量化や空力性能など様々な要素が関わってきますが、エンジンにおける燃費へのアプローチで特徴的なのは、フリクションの低減です。
そもそも、この新世代エンジンは「3B20」という型式こそ、ミッドシップの「アイ」に搭載されてきたエンジンと同じですが、フロント置きにレイアウトを変更しただけでなく、かなりの部分で新設計といえるほど手が入っているそうです。たとえばエンジンブロック内部の冷却水経路も変わっているほどだとか。
ヘッド部分も新しくなっていて、バルブスプリングの形状を変えていたり、カムのタペット部分にDLCコーティングをしたりとフリクション低減につがなる工夫をしているということです。
そして、フリクションに大いに影響あるエンジンオイルは、専用の低粘度オイルを用意。一般的なSAE粘度分類では0W-20がもっとも柔らかいグレードになりますが、その数字でいうと「0W-15」に相当するほどといいます。
また、エンジンの基本スペックでいえば、レギュラーガソリン仕様ながら12.0という高い圧縮比を実現しているだけでなく、吸気カムの可変バルタイ機構により、高膨張比型エンジンとして作動させることで、効率にすぐれているわけです。しかも、軽自動車としては初めて水冷式のクールドEGR(排気再循環)を積極的に活用することにより、ポンピングロスも低減しているということです。
そのほか、パワートレイン系では、三菱の軽自動車としては初めて採用された副変速機付きCVTは、省燃費グレードに限って、ディファレンシャルのサイドギアに一般的なテーパーローラーベアリングではなく、低抵抗なボールベアリングを採用。ミッション内の油圧もギリギリまで下げるなど、ここでもフリクションを減らしています。
さらに、エンジンの発生するトルクを正確にCVTに伝え、精密な協調制御を行なったことも、この省燃費につながっているのだそうです。もちろん、AS&G(オートストップ・アンド・ゴー)と呼ばれる13km/h以下でエンジンを止めるアイドリングストップ機構も燃費性能には大きく貢献しているといいます。
実際の走行では、どれほどの燃費を実現してくれるのでしょうか。ちなみに、 東京・湾岸エリアで小一時間ほど流れに合わせて走ってみたところ、メーター内の燃費計は16km/L程度の数値を示していました。
(山本晋也)