トヨタ自動車は2011年の東日本大震災による原発事故後、同年夏場の電力供給制限で生産に大きな支障をきたしました。
また2012年9月には東京電力が原発に代わる火力発電での費用増などを理由に電気料金の大幅値上げに踏み切り、さらに関西電力や九州電力も2013年5月からこれに追従する動きを見せています。
こうした状況を踏まえてトヨタ自動車は4月2日、自動車製造業の資金力を活かして同社が出資しているKDDIの「au携帯通信事業」に続き、「電力小売り事業」に7月から参入すると発表しました。
現状よりも安価な電力を調達することで、生産コストを抑制する狙いがあるとみられます。
電力事業はトヨタの100%子会社「トヨタタービンアンドシステム」を介して行うようで、自家発電設備を保有する事業者や卸売電力市場(JEPX)などを通じて電力を購入、トヨタグループ内各社等に販売する計画で、当面グループ外への電力小売りは行わない模様。
2013年度の電力供給規模は東電管内で数万KW程度を想定しているようで、トヨタ販売店 数百店分の電力を賄えると言います。
トヨタの電力事業参入は政府が4月2日に電力小売りの全面自由化や電力会社から送配電部門を切り離すことなどを盛り込んだ「電力システムの改革方針」を明らかにしたことに合せて発表されたもの。
政府の狙いは電力会社に競争を促すことで、電気を安く安定的に供給できる体制を作ることで、新政権の成長戦略の一つにもしたい考えが背景に有る模様。
1951年に定められた現行の電力制度を60年ぶりに大変革することになり、日経新聞が伝えるところによると、具体的には以下3ステップで進めることになるようです。
①2015年に電力需給を広域で調整する認可法人を設定
②2016年に電力小売りの参入を自由化
③2018~2020年に電力会社の発送電を分離
茂木経済産業相によると、「今回の改革は需要側にとって選択の幅が広がり、電気料金の低下にも繋がる」としており、2015年の通常国会での発送電分離法案提出を目指すとのこと。
自動車会社の電力事業参入は「特定規模電気事業者」(PPS)として電力供給を始めることを経済産業省に届け出ることから始まり、日産も既に登録を済ませている模様。
このように自動車生産に必要な電力をいよいよ自主調達・販売出来る時代に入ったようで、これを機に家庭用電力の販売についても各社が参入することで競争の原理が働き、リーズナブルな業者をチョイスできる時代となりそうです。
従来大きな障壁となっていた「送配電」部分を分離することで、今後の電力供給事情が一変する可能性が出て来ました。