2013年度の春闘では円安の恩恵を受けるトヨタ、ホンダ、日産などの自動車大手が3月13日、一斉に年間一時金(ボーナス)などで組合要求に満額回答を提示しました。
トヨタ自動車も2013年3月期の単独営業損益が5期ぶりに黒字化する見通しのようで、今回の満額回答はそれを受けての判断と思われます。
ただ、今年の春闘では各社共にベースアップよりも一時金で従業員に報いる傾向が顕著で、こうしたところからも依然企業側の慎重な姿勢が垣間見えます。
一方、デフレスパイラルからの脱却を掲げる安倍内閣の経済政策「アベノミクス」は「機動的な財政出動」「大胆な金融緩和」「成長戦略」の「3本の矢」で経済成長率3%を目指しており、日本自動車工業会もこの政策を歓迎。
安倍政権発足後の円安傾向による営業利益の押し上げ効果は2013年3月期に自動車主要8社で約3000億円に上るとか。
トヨタ自動車の株価を見ると、2012年12月27日時点で3,930円だったのが、政権交代後に1,000円近くも一気に上昇しており、為替もドルが90円台にまで円安に振れるなど、アベノミクス政策の効果がみられるようです。
専門家によればこうした円安・株高の傾向は少なくとも今後も2~3年は続くようで、米国や新興国の需要好調を背景に2013年3月期の業績も順調に伸びる見通しと言います。
振り返れば日本車メーカーは2008年のリーマンショック以降も2011年3月に発生した東日本大震災や、同年秋にタイの部品生産拠点を襲った大洪水でサプライチェーンが寸断、一年後の2012年9月には尖閣諸島を巡って中国市場の日本車販売が激減するなど、たて続けの自然災害や外交問題の影響をモロに受ける中、何とか今日の復旧に漕ぎ付けたところ。
今回、自動車メーカー各社が春闘で満額回答した背景には安倍首相が財界関係者に対して「業績の改善している企業は報酬引き上げの取り組みを」と要請したこともありますが、実際には自動車各社が1ドル=70円台の超円高でも経営が成り立つように努力して企業体質を強化して来たことが一番大きな要因となっていることを見逃す訳にはいきません。
今後も円安効果だけでなく、2014年の消費税増税に伴う駆け込み需要や2015年に予定されている自動車取得税廃止などの効果も期待できそうな状況。
しかしながら、自動車業界の明るい見通しとは裏腹に、消費者目線で考えた場合、「アベノミクス」による円安傾向はガソリンや食料品材料などの輸入価格上昇を招くと共に、経済効果が賃金に反映されるまでには時間がかかることや、2段階の消費税増税などの懸念材料も。
今後のTPP本交渉も含めて「アベノミクス」の動向に注目して行く必要が有りそうです。
・自工会豊田会長が米の軽自動車「非関税障壁」指摘に言及 !
https://clicccar.com/2013/03/26/216146/
・TPP協定交渉参加を正式表明 ! 自動車業界への影響は?
https://clicccar.com/2013/03/16/215328/
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