コンパクトカーの分野では燃費向上を目的にエンジンをダウンサイジングする際、動力性能を確保する為に「過給機」を併用する「欧州方式」が日本車でも日産NOTEを皮切りに登場するようになりました。
一方、今や販売で登録車と双璧をなす軽自動車に於いても従来よりスポーティ・グレードでは660ccの制限枠の中で、一クラス上の動力性能を得るべく、ターボを搭載したモデルが設定されています。
余り燃費を気にしなかった、かつてのような大排気量車への採用とは少々目的が異なるターボの活用法が再び見直されている中、11月1日に発表されたホンダ「N-ONE」でも「ダウンサイジング過給」と称するターボ搭載モデルが設定されました。
ホンダによれば、「エンジン排気量が660ccの軽自動車で排気量1.3Lクラスの小型車以上の走りを実現すべく開発に取り組んだ」と言います。
まず気が付くのが、スズキ ワゴンRやダイハツ ムーヴなどのライバル車がターボ付きモデルをFFと4WD仕様のそれぞれ上級グレードとして、1モデルずつしか設定していないのに対して、「N-ONE」ではターボ搭載モデルを「ツアラー」シリーズとして大々的に展開している点。
FF、4WDで夫々4グレード(ツアラー、ツアラーL、プレミアムツアラー、プレミアムツアラーL)ずつ、計8種類ものグレードを設定しているのが特徴。
装備的に見ると最上級の「プレミアムツアラーL」がタイヤ/ホイールサイズなどから見てライバル車とほぼ同等仕様となっているようで、その他の3グレードは装備を段階的に割愛してターボモデルの価格をリーズナブル化する手法をとっているようです。
つまりターボ付きモデルのエントリー価格を下げることで顧客層を広げ、同社の「ダウンサイジング過給」技術をアピールすると共に根付かせようとする戦略が伺えます。
さて、1967年に登場した「N360」のデザインをモチーフにしながら、現代流の解釈で新たに生み出された「N-ONE」ターボの実力や如何に?
早速ライバル2車(スズキ ワゴンR、ダイハツ ムーヴ)とスペックを詳細比較してみました。
上記比較から「N-ONE」の以下の特徴が読み取れます。
①全長は同一ながらホイールベースは3車中で最長(但し室内長は最短)
②エンジン出力は同一ながら、3車中トップの最大トルクを低回転で発生
③車両重量がやや重め(廉価グレードでは他車同等レベル)
④トルクが太くPW(パワーウエイト)レシオで劣るも、TW(トルクウエイト)レシオで勝る
⑤アイドリングストップはターボモデルに設定無し(NAモデルには有り)
⑥車重の影響なのか燃費は3車中最下位(廉価モデルは23.2km/L)
⑦安全装備でライバル車を圧倒(TRC、VSCも標準装備)
⑧比較車の車両価格は3~4万円高め(123万円からの廉価版有り)
以上、ライバル2車と同等装備で比較するとなると、「N-ONE」では最上グレードを引き合いに出すことになり、逆にライバル車には用意されていない廉価グレードと比較すれば快適・便利装備は見劣りするものの、車両価格は123万円まで下がり、ターボ付き車としてのお買い得感が際立つラインナップ構成になっていると言えそうです。
また、「N-ONE」がかつてのN360に比較して腰高に見えるのはエンジンやプラットフォームを「N BOX」と共通としたことでフロントシート下に設置された燃料タンク配置と居住性(頭上スペース)を両立させた為であることが室内高を比較すると判ります。
「エンジン屋」であるホンダの強みを活かしたトルク特性は同エンジンを積むN BOXより車重が100㎏以上軽い分、街中での発進時にさらに力強さを感じさせると共に、7000rpm以上の高回転まで伸びやかに回るエンジン特性を活かしてストレスフリーな走りが期待できそう。
ニューレトロなエクステリアや水平基調、且つ凹面で構成されたすっきりとしたインパネデザイン、凝った作りのHIDヘッドランプなどもこのクルマの特筆できる美点。
11月1日の発表時点で月1万台の販売目標に対し、既に受注が9,000台を超えているのも頷けます。
■N-ONE 公式HP
http://www.honda.co.jp/N-ONE/
■N-ONE 主要装備
http://www.honda.co.jp/N-ONE/webcatalog/equipment/list/pdf/n-one_equipment_list.pdf
■主要諸元
http://www.honda.co.jp/N-ONE/webcatalog/performance/spec/pdf/n-one_spec_list.pdf
【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】https://clicccar.com/?p=203856