DUNLOPタイヤ 100年の進化を支えた技術の総本山を公開!

ダンロップタイヤを開発、製造、販売する住友ゴム工業は、ダンロップタイヤ開発の要となる「住友ゴムタイヤテクニカルセンター」をマスコミに向けて公開しました。

神戸にあるタイヤテクニカルセンターは、本社ビルに隣接しています。かつては工場があった場所だそうで、古くは日本の国産タイヤ発祥の地でもあったそうです。

そんな、日本のタイヤ作りの最先端を100年以上見守ってきた地で、現在も日夜最新のタイヤ技術は磨かれていた。

その最先端の技術を支える4つの試験、測定器をご紹介します。

 

●インサイドドラム試験機

ドラムの内側に模擬路面を配し、実際の路面を再現する装置です。

パワー測定のシャシーダイナモや車検場のスピードメーターチェックなど、多くの“車輪をその場で回すためのもの”は、ローラーの外側にタイヤを接して回転させるのが普通と言えるでしょう。では、この試験機がなぜドラムの外側でなく内側なのか? 実はこの試験機は氷上を再現し、スタッドレスタイヤの開発に大きく貢献することができるのです。

その再現の方法とは、ドラムの内側に水を流し、回転させることで遠心力により水がドラム内側に張り付き、試験機のある室内温度ごと下げて行くことで氷の層を形成することが可能なのです。スタッドレスタイヤの性能で重要なシーンとなる「温度が高めの状態」を安定的に再現できます。

氷上でタイヤが滑る原因の多くは、氷が溶けて水が氷とタイヤの間に入り込むことです。北極圏に近い地域の真冬など、完全に融けないカチカチの氷ではコンクリート路面と同じようなもの、と言われることもあります。この試験機では、そのような比較的温度が高めの氷の状態-10〜0℃の氷上路面が自由に再現できるわけです。

 また、氷上だけでなく、路面のピースを張り替えることで様々な道路を再現できます。ドライ路面では主にサーキットを再現した試験が行われているそうです。もちろん、氷らせずにウェット路面での評価としてハイドロプレーニング現象なども再現できるそうです。

 

 ●大型無響実車試験室

タイヤのノイズは大きく分けて2種類、タイヤが路面を叩いて車外に発する騒音と、何かを乗り越えた時などにタイヤ内で発生して車軸を通して車内に伝わってくる騒音です。

前者は一般に速度とともに増えていく「ガー」といった連続音で、後者は高速の継ぎ目などを乗り越える時に聞こえる「ポン」といった単発の騒音です。

ここで測定しているのは前者の車外騒音。ここではローラーの上を“走る”タイヤから発生する音を、マイクによって拾い、音圧や周波数などを調べることができます。

トラックやバスも通れる入り口の内側も含め、周囲の壁は球音のためハリネズミ状に三角の山が張り巡らされています。声が響かず不気味な感覚になります。

近年、マフラー音をはじめとして車外での騒音は問題視されつつあり、車両全体としてはタイヤから発生するノイズも低減もより求められていくでしょう。そういったニーズからも、こうした測定試験室を持っているのは重要なことです。

ちなみに、車内に伝わってくるほうのノイズは、ダンロップの場合スポンジ吸音材で対策しています。LE MANSシリーズで実際に採用されています。

 

●転がり抵抗測定試験機

ここ最近、低燃費がタイヤでも大きなキーワードとなっています。タイヤに求められる性能は、まずは「滑らない、グリップすること」が前提です。けれど、あまりにも「粘る」タイヤでは、走行抵抗となって燃費を悪化させます。この粘りが転がり抵抗とも言えるわけです。

転がり抵抗測定は、路面に代わるローラーと、それに接して逆向きに止めようとする力を計測するものです。他の測定器も同様ですが、タイヤの性能はご存知の通り内圧によって大きく変化します。圧力は温度によって変わるわけなので、ここでも温度管理などは厳密に行われます。そのため、測定するタイヤは同じ温度に管理された前室で3時間置かれた後、試験に供されるとのことです。

 

●摩耗エネルギー試験機

タイヤといえば摩耗も付き物です。ここではタイヤがどのくらい、どのように減っていくのかを測定することができます。

といっても、闇雲にタイヤを長時間回し続け、実際にどれくらい削れたかを図るわけではありません。

ガラス路面状をタイヤがゆっくり転がり、タイヤ表面の「マーカー」がどれくらい捩れてズレが生じたかをカメラにより測定し、どれくらいの圧力が上下、前後、左右の3方向にかかっているかを計測します。これらのデータから、試験タイヤを使い続けていくと将来どのようにどれくらい減ってしまうかを推測することができるのです。

それにより、タイヤの寿命はもちろん、偏摩耗などに対する特性も測定できます。

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このような試験機が、最新の低燃費タイヤの開発に大きく関与しているのは間違いないでしょう。これからの100年もこの地でまた新しいタイヤが産み出され続けることでしょう。

(小林和久)

 

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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