都内で電車とテールツーノーズができる場所

昭和40年代、モータリゼーションの波に飲まれて急速に衰退した路面電車。その衰退の原因は、道路上に敷かれたレール上を走る路面電車がクルマの通行の邪魔者扱いされたからです。また地下鉄路線網の整備なども進行し、札幌、仙台、横浜、名古屋、京都、大阪、福岡など大都市圏の路面電車の縮小、廃止が相次ぎました。東京も東急玉川線が消滅し、都電も荒川線を残して廃止されました。都電荒川線が存続できた理由のひとつは、その運転区間の大部分が専用軌道だったことにもあります。
専用軌道というのは、道路と線路が完全に分離した状態、簡単に言うと路面電車(軌道)というよりは郊外電車(鉄道)に近い形態をとっている状態を指し、場所によっては踏切も設置されています。

この状態ならば自動車の通行の障害にならないというわけです。

そんな都電荒川線ですが、現在も自動車と同じ道路上を走行する併用軌道区間が1箇所だけ残っています。それが飛鳥山〜王子駅前の区間です。

この区間では自動車も軌道敷を通行することが可能で、軌道敷通行可の標識も設置されています。

ただし、レールでのスリップ事故を未然に防ぐため二輪車の通行は禁止となっています。これはこの区間がカーブしている坂道であることも関係していると考えられます。

飛鳥山の交差点では池袋方面に右折するレーンと都電の軌道が同じなので、このように都電と自動車がテールツーノーズ状態になります。

別に競争ができるわけではないですけど、電車を正面に見ながらクルマを運転するというのは、都内ではここでしか経験できません。

以前はもう1箇所併用軌道区間がありましたが、現在は軌道と道路は分離され、センターリザベーション方式で運行されています。

今や都電らしい面影を残しているのはここだけ。ぜひ話のタネ気分で見てみたらいかがでしょうか。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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