IPTハイブリッドバスに乗ってみました。【エコプロダクツ2011】

東京モーターショー一般公開日初日の12月2日(金)から、エコプロダクツ展の最終日である12月18日(日)までの17日間、実証試験として IPTハイブリッドバス が1日5便運行されていたので試乗してみました。

まずは、IPTハイブリッドバスの実証試験とは何か?というところからご説明しましょう。

平成17年度から国土交通省が推進する次世代低公害車開発・実用化プロジェクト(第2期次世代プロジェクト)というプロジェクトがあります。車両は、このプロジェクトに参画している日野自動車が開発し、実証運行の都度担当者が各種データを採取しているとのこと。

IPTとは、“非接触誘導給電”の意味で、充電の際にプラグをつなぐことなく充電するシステムのことです。充電の際に毎回充電プラグの抜き差しが不要になることにより、省力化することを主な目的としています。

IPTハイブリッドバスは、大容量の電気モーターと5リッターディーゼルエンジンを搭載し、通常はモーターによりEV走行するバスです。路線の起終点や車庫などに設置した給電設備と車両の受電装置との間で、大容量の非接触誘導給電により急速充電が可能です。充電ケーブルを接続することなく、台に置くだけで充電する携帯電話やコードレスホンがありますが、それらと同じ考え方です。非常時や充電装置が設置されていない区間を走行する場合や、高台への登坂時などにはディーゼルエンジンを併用して、ハイブリッドバスとして走行します。

今回このIPT設備は、ビッグサイト中央ターミナルと豊洲駅バスロータリーに設置されていました(実証運行期間が終了した今はもう撤去されているはずです)。

これまで、2008年に羽田空港ターミナル間無料バス、洞爺湖サミットでの国際メディアセンターのシャトルバス、上高地で、2009年に都営バス05系統(東京駅ー晴海埠頭間)、エコカーワールドでの桜木町駅から赤れんが倉庫間のシャトルバス、そして2011年には再び都05系統での実証運行が行われました。

今回は、ビッグサイトと豊洲駅を結ぶ路線での運行でした。運賃は無料。運行は前回同様都営バスが担当しました。

運行に際しては、ビッグサイト側を起終点と想定し満充電になる30分停車、豊洲側では途中バス停を想定した3分間補充電停車するダイヤが組まれました。

では、乗車してみましょう。

車体は、今回の実証運行にあたって内外装が近未来をイメージしたデザインに大改造されました。以前は、ベースになったブルーリボンシティハイブリッド(以下BRC)そのものでしたが、今回思い切って変えてきました。歌舞伎のイメージ?日野の社内デザインだそうです。右後輪にも巻き込み防止カバーが取り付けられているのが新しい。ヘッドライトはセレガのものが使われています。

内装もこの通り。コンセプトカーのようなデザインです。

原型をとどめているのは運転席のみ。運転手頭上のエアコン吹き出し口の下に、充電関係の状態表示兼操作パネルが設置されています。これがBRCとの1つ目の違い。パネルには、充電経過時間、満充電までの時間が表示されています。このパネルでニ次コイルの昇降操作も行います。非接触誘導給電のためのコイルの車両側をニ次コイル、充電器側を一次コイルと呼んでいます。

2つめの違いは、運転席左手前側にあるインジケーター。コイルが格納されたことを知らせるものと、イグニッションオンで走行可能状態にあることを示すREADYランプ。上のスタフ(運転手が携行する運行表のこと)にはこの日のダイヤが示されていて、それぞれの充電時間も明示されています。Eから満充電までの所要時間は30分。満充電状態では15km走行可能だそうです。

3つめは、運賃箱前方のモニター。黄色線と太い白線をぴったり合わせて停める。

側面は、サイドミラーでボディラインと地面の白線をぴったり合わせます。

一次コイルとニ次コイルの位置がずれると充電効率が落ちるため、ピタリと合わせなければなりません。停車時に一発で合わせるためにはそれなりのウデが要求されます。

充電中は、後部に設置された表示器に「非接触充電中」と表示されます。

そのコイルですが、車体側はHybridの文字の下あたりにあります。これはニ次コイルが下がった充電状態です。

そしてこれが地面に埋め込まれた一次コイル。離れた場所に設置された整流器につながっています。

バリアフリー対応の面でも進化しています。
ぱたんと倒すワンアクションだけで使える車いすスロープが運転手さんには好評でした。現役路線バスに装着されている装置はもっと複雑なのだそうです。

正面に見える椅子3人分を跳ね上げ車いすを固定します。

走り始めると、当然のことながらEVなのでとても静か。マニュアルトランスミッションのため、運転席だけを見ていると普通のバスと変わりません。運転席後ろのモニターにはシステムの作動状況が表示されています。(写真は停車時に撮ったもので、充電中であることを示しています。)

豊洲駅バスロータリーに到着すると、アンケートに答えて降車。「何分まで待てるか」という設問がこのバスらしい。“待てない”から“10分以上でもいい”までを選ぶ。あなたなら何分まで待てますか?

一方社外では、器具を取り付けて停車位置の測定をしていました。座標軸の中心に点があることが理想ですが、範囲内に収まっていれば充電に支障はないそうです。

測定しながらプログラム通り3分間充電した後、車庫に帰って行きました。

実証試験は今回で一応の区切りだそうですが、これまでの実証試験の結果が将来どのような実用化技術となって私たちの前に登場するのか、要注目です。

(Autanacar)