90年代に誕生した和製ミニバンは、独自の進化を遂げました!【90年代国産車のすべて/ミニバン編】


ミニバンといえば、もともとアメリカが発祥のジャンルです。全幅2m級のドでかいサイズで「家族や仲間が多人数乗れて快適に移動できるクルマ」というだけでなく、「お母さんが子供を送迎するマミーカー」とか「お父さんが日曜大工で使う合板を平積みできるクルマ」という用途だと聞き及んでいます。あの巨大なクルマを「マミーカー」呼ばわりするのですから、さすがスケールが違いますよね。でもそのまま輸入したのでは、日本では大きすぎ。そこで、本家ミニバンを日本なりに解釈した和製ミニバンが、90年代に続々と誕生してきました。
日本でミニバンの口火を切ったのは、90年に「天才タマゴ」でデビューしたトヨタエスティマでした。2400cc直4エンジンをミッドシップに横置き搭載した巨大なタマゴは、強烈な個性と未来感を発散していましたね。しかもトヨタは、日本の道路事情に合わせて全幅を5ナンバー枠に狭めたルシーダ・エミーナを追加する用意周到ぶりでした。


対する日産は、97年に高級ミニバンの祖、エルグランドを送り出しました。3300ccのV6エンジンを搭載した豪華絢爛たるエルグランドは、「でっかくいこうぜ人生は!」のCMと共に大ヒットしました!ここで高級ミニバンの不思議なところは、バブルが弾けてから現在に至るまで、実によく良く売れていることですね。何やら80年代の「ハイソカーブーム」に近い志向ではないかと感じています。


既存のFFセダンをベースにしたミニバンも、新しいジャンルと言えるでしょう。
94年にはホンダオデッセイが、バブル崩壊後の家族回帰志向に乗って大ヒット!「お化け家族のアダムスファミリー」が演じたCMもインパクトがありました。
当時ホンダは背高な大型車を作る工場を持たなかったために、オデッセイの全高は生産ラインの高さで決まったと聞き及んでいます。でも既存のアコードをベースにしたからこそ、3ナンバーらしからぬ低価格と低床低重心の優れた走りが備わったのですね。スペアタイヤを3列目窓際に移設して、3列目シートを床下に回転収納する「技」も画期的でした。


また、2L級FF箱型ミニバンは、96年のホンダステップワゴンが切り開いた市場だといえるでしょう。「こどもといっしょにどこいこう」のCMは、「クルマに乗って家族みんなで楽しもう」という提案でもありました。
ちなみに自分自身、屋根がパカッと開いてテントになる「ステップワゴン・フィールドデッキ」を購入して、今も現役で愛用しています。5人家族でもお出掛けが安上がりな車中泊暦は、もう12年になるんですよ。

ところでテントを搭載したクルマといえば、95年のマツダボンゴフレンディ・オートフリートップこそが、元祖カタログモデルでした。今思うとマツダは「先見の明」がありすぎですよね、ひょっとして今ならば・・・。

「日本はミニバンしか売れない特殊な市場」なんて揶揄されることがありますが、和製ミニバンの素晴らしさをわかっていないコメントだと思います。90年代は、家族で楽しむ和製ミニバンが、独自の進化を遂げた時代でした。

(拓波幸としひろ)