内燃機関の効率をどんなにあげても、タイヤに伝わるのは、もともとの熱エネルギーの3割がせいぜい。
とあるメーカーの試算によると、通常走行時において燃料が持つエネルギーのうち走行に使われているのは約20%。
残りの80%は、冷却損失49%、排気損失18%、フリクション他13%といった具合で失われているといいます。
というわけで各メーカーが注目してきたのが、捨てられてきた排気損失の再利用。
たとえばトヨタや日産は排気の熱をエンジンやミッションの暖機に利用していたりしますが、これでは捨てている熱エネルギーのごく一部しか利用できません。
そこでBMWが以前から研究しているのが排気熱を利用した蒸気発電装置、その名も「ターボスチーマー」。
もちろん蒸気発電といっても、蒸気機関車のような水を注ぎ足すというものではないので、汽笛を鳴らすわけではありません、悪しからず。
さて実験室レベルでは2006年にひとつの成功を見ている、このプロジェクトですが、ついに車載レベルまでシステムサイズをコンパクト化することに成功したとの報が届きました。
サンプルとなったのは5シリーズのセダン。
下からみると、排気管を覆うようにシステムが追加されていますが、その単体重量は10~15kg程度といいますから、かつて実験室レベルだった時代から考えれば、かなり実用的なサイズになったといえそう。
なお写真はモックアップで、すぐさま実用化というわけではないようですが、車載の目処がたったということでしょう。
排気熱によって発電する「サーモ・エレクトリック・ジェネレータ(TEG)」も第3世代へと進化。
1000Wの発電能力を目指して、開発が進んでいるとのこと。
さらに、このTEGとEGRクーラーをひとつのシステムにまとめることで効率化をはかるというアイデアも発表されていて、車載についての様々な検討がされている様子もうかがえます。
それにしても、ここまで来れば実用化も目前といった雰囲気。
内燃機関が捨てざるを得なかった排気熱をリサイクルする、このシステムを最初に積むのは、どのモデルになるのか。
そして、これによって内燃機関のライフはどれだけ伸ばすことができるのか。
エンジンにこだわるBMWらしい挑戦の、そう遠くないであろう将来に期待しましょう。
(山本晋也)