農業にヒントを得たバンパーリサイクルあれこれ

マツダが世界で初めて使用済みバンパーから新車バンパーへのリサイクルに成功した、という発表がありました。

 

プラスチック製のバンパーを素材として、新しいバンパーに再生しようという試み。プラスチック製品toプラスチック製品と考えると、それほど難しくないと思うかも知れませんが、かなりハードルは高いもの。

 

これまでの何十年というレベルで各メーカーがチャレンジしているリサイクルの大テーマなのです。

 

たとえば使用済みバンパーは塗装されています。まずは塗装をはがさなくてはバンパーとしてはリサイクルできません。

 

じつは、その技術でいえば日産が年初に発表した技術があります。

日産の場合は工場内で発生した不良バンパーをリサイクルに回すというもので、塗装を剥がすのに精米技術を応用しているというのがトピックでした。

 

リーフのバンパーの20%が、このリサイクル材を使っているということです。

 

 

しかし、日産の場合は自社の工場内でのリサイクル。マツダがチャレンジしたのは長年市場で使用されて廃車になったクルマから回収された使用済みバンパーのリサイクルというのですから、さらにハードルが高いことは想像通り。

 

廃車から外されたバンパーには金属部品や補修跡など、多くの異物が含まれています。

従来は、この異物除去を手作業に頼っていたために、効率アップが難しく、またコストダウンの壁になっていました。

 

しかし、今回の発表によれば、異物除去工程において、穀物用石抜機を活用することで振動と送風により破砕後のバンパーから金属を確実に除去する技術を確立したとのこと(株式会社サタケと共同)。

 

日産の塗膜除去も精米技術のアイデアが使われていたとのことですが、ここでも農業技術の応用が、バンパー・リサイクルにおける効率的な方法につながったというのは偶然なのか、それとも農を基本とする民族性ゆえなのか。二社にアイデアに共通する穀物生産というキーワード、ちょっと気になるところ。

 

 

ところで、マツダの技術においてもキーとなるのは塗装をいかに除去するかの技術。

とくに製造から10年以上を経たバンパーの場合は塗装のコンディションも様々で、一筋縄ではいかないといいます。

塗膜が残ったまま素材として利用すると、新品バンパーとしての品質が保てないのが、ここでの問題。

 

そこでマツダが採用したのが粉砕した後に選別するという工程を設けること。

光とCCDセンサを使った選別メカニズムによって、塗膜のついた欠片を99.85%の確立で除去することを可能にしたといいます。

 

これによって、バンパーからバンパーへのリサイクルが可能になったといいます。

 

とはいっても、リサイクル素材の混入率は新品バンパーの10%。もっとも技術的には再生材の混入率は30%程度まではあげられるということですから、これからの進歩に期待しましょう。

 

まずは広島地区で、マツダ車の廃車から出たバンパーのリサイクルからはじめるそう。その再生材を利用したバンパーは、ビアンテのリアバンパーとして生まれ変わるということです。

 

 

(山本晋也)

 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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