2010年のパリモーターショーでルノーが発表したピュアEV「フルエンスZE」を覚えているでしょうか。オーソドックスなセダンをベースにEVとした、いわゆるメーカーによるコンバートEV的な成り立ちのモデルです。
ベースとなったフルエンスは1.5Lディーゼル、1.6/2.0Lガソリンエンジンを搭載していますが、フルエンスZEは70kW、226Nmというスペックのモーターを搭載。バッテリーはリチウムイオン電池で、その総電力量は22kWh。今年後半の販売開始がアナウンスされています。
ルノーといえば日産とアライアンスを組んでいるわけですが、フルエンスZEには日産のピュアEV「リーフ」の技術が投入されているといいます。たとえばリチウムイオンバッテリーはリーフ同様のラミネートタイプとのこと。そのためにバッテリー生産工場を欧州に建てる予定。
ちなみに日産リーフのモータースペックは80kW、280Nmで、バッテリー総電力量は24kWhですから、フルエンスZEは弟分というか、年下の親戚というか、ともかくDNAの近い関係といえましょう。
さて、そのフルエンスZEがオーストラリアでバッテリー交換式EVとして発売される、というのですから聞き捨てなりません。
もともと、普通充電・急速充電・バッテリー交換という3方式の充電方法を持つと発表されていましたが、ショーカーですからなんでもいえる、いわゆる眉唾な部分もありました。しかし、こうして実際に数分で満充電のバッテリーパックに交換できるEVとして市販され、その交換ステーションインフラ込みで展開されるとなれば、あたらしいEVとのカーライフをイメージさせることウケアイであります。
しかも、バッテリー交換インフラを担当するのはベタープレイス社。同社が日本でバッテリー交換式タクシーを試験的に運営していたことを記憶している人も少なくないかも知れませんが、ともかくバッテリー交換式EVとそのインフラに関する経験豊富な会社。
ベタープレイス社の発表によれば『2011年後半から首都キャンベラでインフラを展開し始め、その後全国へと拡大する計画です。2013年までに、米国や中国などの国々での展開計画をしのぐ世界最大のEV充電ネットワークがオーストラリアで展開される予定です。』ということですが、たしかに広大なオーストラリアでバッテリー交換式EVが成功すれば、他の国で通用するインフラになることも期待できます。
バッテリー交換を実現するには、設計段階からバッテリーパックの形状や位置などを考慮しないといけないので、既存のEVを交換タイプにするのは難しいでしょうが、こうしたルノー&ベタープレイスのシステムがグローバルに通用するものに成長できるかどうか、ともかくオーストラリアでの挑戦から目が離せないといえそうです。
(山本晋也)