「最新排出ガス規制適合車における、排出ガス低減性能の「無効化機能」について東京都環境科学研究所による調査結果」についての発表が東京都・環境局よりあり、その発表により、いすゞの中型トラック”フォワード”の一部グレードにおいて、定速走行時に現在の排ガス規制を超えた窒素酸化物が排出されていることが明らかになったという。
いわゆるモード計測においては規制値に収まっていた排ガスが、60km/h定速走行において、大幅にオーバー、それを『規制排出ガス低減性能の「無効化機能」が東京都環境科学研究所の本調査にて発見されました』という発表がされたということです。
その試験結果を示したのが、こちらのグラフ。
見ての通り、60km/h定速走行に入ってから4分程度で、排ガス中のNOx(窒素酸化物)濃度が急上昇。同時にCO2濃度が下がっています。たしかにCO2の低減も重要な時代ではありますが、それによって光化学スモッグの原因になったりするNOxが増えてしまうのは問題。
そもそもディーゼルエンジンは空気を圧縮したところに燃料を噴射して燃焼させる仕組みなので、燃費改善とNOxの増加はバーターの関係にあるのですが、本来は上のグラフでいう最初の200秒までのようにNOxの排出を抑えているものです。穿った見方をすれば燃費改善のために排ガスの浄化を無視したといえなくもありません。そこが東京都・環境局の言う『規制排出ガス低減性能の「無効化機能」の発見』という部分につながったのでしょう。
すでにメーカーでは対策に取り組んでいるということですが、せっかくクリーンディーゼルが進んでいる中で、こうした排ガス問題が起きるのは信頼性を失いかねません。素早い、適切な対応を期待したいものです。
ちなみに、NOx低減技術として現在採用されているものとしては、NOx吸蔵触媒を使う方法と尿素SCRによるものがありますが、問題となったいすゞフォワードが採用しているのは前者の方式です(6気筒エンジンを搭載するグレードは尿素方式を採っている)。
尿素SCRではアドブルーと呼ばれる尿素水の補充が必要で、その手間やコストを嫌って小型トラックや乗用ディーゼルでは吸蔵触媒方式を採用するケースもありますが、今回の件の理由によっては今後は尿素方式が主流になっていくかもしれません。今後の対策まで目が離せない状況となりそうです。
(山本晋也)