自走できる大容量バッテリーが被災地で活躍する?

一部報道によると、三菱自動車がアイ・ミーブの駆動用バッテリーから1500Wの家庭用電源を取り出せるようにするオプションパーツを開発中、今年中にも市販に移されるという。

 

たしかに、アイ・ミーブのバッテリーは総電力量16kWhと、一般家庭の一日あたりの平均消費電力の10kWhを余裕で超えるもので、移動によって電気を使ってしまうとはいえ、全体でこれだけの電力量があれば、かなりの家電製品が動かせること請け合い。

 

東日本大震災の被災地では電気は生きているけれどガソリン供給が滞るという地域もあり、そうしたケースでEVが活躍したというニュースも記憶に新しいところ。

 

たとえば電気の来ている役場でバッテリーに電気を溜めて、エネルギーインフラの絶たれたところで非常電源として活躍、また炊き出しでは電子レンジが使えるのでバリエーションが増えることなどが期待できるわけです。

 

また計画停電により人工呼吸器などの家庭用医療機器が停まってしまうという危機も報じられたところですが、そうした場合も、この新しいオプションパーツを備えたアイ・ミーブを使えば、停電時間内の電源確保は十分に期待できます。

 

クルマごとでなくてもバッテリー単体で運べばいいと思う人もいるでしょうが、アイ・ミーブのバッテリーは単体でも約200kgと重量級で、これだけのバッテリーを人力で運ぶのはかなり難しい問題。もちろんガソリンのクルマが使えればいいのですが、ガソリン供給が不安定なケースではそれも選択肢になりえません。また燃料が手に入らない状況ではポータブル発電機も使えません。

 

というわけで、アイ・ミーブが自走できる大容量バッテリーに変身するという、このオプションパーツ。自治体で使われているアイ・ミーブにはマストアイテムとなりそう。また一般家庭であっても停電時のバックアップが必要不可欠なケースであれば魅力的な存在。これを目当てにアイ・ミーブを購入しようとする家庭があってもおかしくないでしょう。

 

ちなみに1500Wの電源というとエスティマハイブリッドが標準装備していることで知られています。これはキャンプなどアウトドアレジャーでの電源といて活躍することが狙いの装備ですが、アイ・ミーブで同様の使い方をするのは、かなりNG。なにしろ電気を使い過ぎて電欠状態になってしまうと、せっかくのタイヤとモーターがジャマモノになってしまいますから。

 

現状、どのようなシステムになるかは不明ですが、最低限の移動用電力を残せるような設定ができるとよさそう。マニュアル設定で最低限の走行距離が入力できるようになっていると便利で、安心に利用できそうです。

 

(山本晋也)

 

 

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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