CVTは日本のお家芸、いえいえドイツが本場です?【人とくるまのテクノロジー展2011】

無段階に変速できるCVTは、日本メーカーのお家芸、といっても過言ではありません。世界でも例をみないほど、国内でのCVT普及率は上がっています。

いわゆる2ペダル、オートマチックというのは地域ごとのトレンドがあって、北米ではステップATが、欧州ではDCTが主流となっているといわれています。

そんなわけでCVTのノウハウは日本メーカーの特徴といえるのですが、そうとばかりはいえないようです。

先日、横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2011」において、おどろくべき展示がありました。

それが、こちらです。

ドイツの大手サプライヤーグループであるSchaeffler(シェフラー)のクラッチブランドであるLukが出品していたもので、見ての通り、チェーン式CVTのサンプル。

Luk ハイバリューCVT

・200Nmまでのトルク容量
・7.7~8.4の非常に広範なトランスミッションレシオ
・短い全長(298mm)

以上のようなシンプルな説明しかありませんでしたが、LukといえばスバルのCVTであるリニアトロニック用チェーンのサプライヤーであり、またアウディにも供給している実績ある会社。一般的なベルトよりも効率にすぐれ、また大トルクにも適応できるのが特徴を持つのが、このチェーンであります。

その優れたチェーンを生産しているLukが提案する、ハイバリューCVTなのですから見逃せません。

たとえば1.5Lクラスのコンパクトカーを対象とした場合、このCVTにすることで従来型の5MTに比べて、6~9%もの燃費改善が期待できるといいます。

その理由のひとつが7.7以上という変速比幅にあり。

通常、考えられる5MTのギア比をローギア15.6、トップギア3.7とすると変速比幅は4.3程度になりますが、ハイバリューCVTの変速比は14.5~1.9という広く設定できるので変速比幅が大きくできるのです。これによりエンジンの回転数を抑え、さらに常に状況に応じて最適な変速比とできることが、最大9%という省燃費性能につながるというわけ。

こうした変速比幅の大きなCVTといえば日産やスズキのクルマに搭載されているジヤトコ製副変速機付CVTが知られているところですが、それでも変速比幅は7.3ですからLukハイバリューCVTの7.7~8.4という数字がいかに大きいかわかるというもの。

ドイツ車というとDCTに尽力しているイメージが強いので、CVTは日本メーカーの独壇場と思いがちですが、こうしてドイツ系サプライヤーはCVTに力をいれているのです。

日本のお家芸などと、うかうかしてはいられません。

 

もっともスバルのCVTがLuk製チェーンを使っているように、ジヤトコのCVTもBOSCH製ベルトを使っていたりしますから、重要な部分ではドイツ系サプライヤーなくてはCVTは成立しえないともいえます。その意味では、ドイツから高性能なCVTが出てくるのは必然。

それにしても気になるLukのハイバリューCVT。

どういったカタチで市販モデルにつながってくるのか、期待しましょう。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる