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■速度やシフト位置、進行案内、警告、運転支援などをフロントウィンドウに投射
●視線移動が少ないため、利便性と安全性が向上
HUD(ヘッドアップディスプレイ)は、車速やシフト位置、進行案内などの情報を前方2~3mほど先の虚像としてフロントウィンドウ下面に映し出す表示技術です。運転中の視線や焦点調整の移動が少ないことから、認識負荷を軽減して安全性が向上すると注目されています。
高級車だけでなく軽自動車でも普及が進むHUDについて、解説していきます。
●HUDの表示原理
HUD(ヘッドアップディスプレイ)は、クルマの車速やシフト位置、進行案内、警告表示、運転支援機能の作動状況などの情報を、運転者の前方2~3mほど先に浮かんでいるように虚像としてフロントウィンドウ下面に映し出す表示方法です。
ドライバーは、視線を大きく移動させることなく情報を確認し、前方に注意しながら運転に集中できます。情報認識のための負荷が軽減し、安全運転にも貢献することから急速に普及しています。
HUDの光学系装置は、インパネの裏側のスペースに搭載されています。液晶で表示された車速などの情報は、反射ミラーで折り返されて凹面鏡などの拡大ミラーで拡大されます。拡大された表示がフロントウィンドウに反射して、ドライバーは目で見ることができます。
●HUDのメリット
HUDのメリットは、2つあります。
一つ目は視線を大きく動かさなくて良いこと、二つ目は焦点距離の移動量が小さいことです。
・視線の移動量が少ない。
HUDは、ドライバーの視線方向に近いウィンドウ下面に情報が表示されるので、情報確認のための視線の移動距離および移動時間が短くなります。顔を動かさなくてもわずかな視線の移動だけで素早く情報が得られ、視線移動の負荷を軽減できます。
・焦点の移動量が少ない。
運転中のドライバーは、通常20m以上遠方のどこかに焦点を合わせて運転しています。HUDは、前方2~3m先に情報の表示を浮かび上がらせるので、通常のインパネ内にある表示に対して焦点距離の調整時間が短くてすみます。
課題は、光学系の搭載スペースの確保と低コスト化です。
HUDの光学系装置は、インパネ内部に搭載されます。内部には、エアコンダクトやパワステモーターなど多くの部品があり、搭載スペースは十分ではありません。今後、さらに表示エリアを拡大する、表示場所を増やすためには、本体の小型化とともに車両側のスペースの確保が必要です。
●AR(拡張現実感)を適用したHUDの進化
運転支援や自動運転の普及を追い風に、2017年にARを適用したHUDがトヨタ・レクサスLSによって実用化されました。
ARは、経路案内の矢印や人の飛び出しを警告するイラストなどを、車両前方の風景に重ねて表示します。HUDで生成した映像と対象物の位置を重ね合わせて映し出します。
安全性や利便性を向上させる効果が大きいため、ARを組み合わせたHUDが今後急速に広がると予想されます。ARが進化してくると、メーターやカーナビのようなインパネ内にある多くの表示装置が、AR機能付きHUDに取って替わられる可能性があります。
すでに高級車から軽自動車まで採用が進むHUDですが、さらに安全性や利便性を高めたARと組み合わせたHUDが今後普及することが予想されます。HUDにとっては、多くの情報から何を選択し、どういうタイミングで、どこに表示するかが重要です。
またディスプレイの仕方は、クルマのインテリアイメージに大きく影響するので、機能性だけでなくデザイン性についても十分な検討が必要です。
(Mr.ソラン)