【自動車用語辞典:視認性「フォグランプ」】悪天候時の視界を確保しつつ、自車の存在を知らせる装置

■ヘッドライトと異なり装着の義務はない

●「白色または淡黄色」と規定されている

フォグランプは、文字通り濃霧や激しい降雨、降雪で視界が悪いときに点灯させて、車両前部の視界を確保し、同時に対向車へ自車の存在を知らせる役割を担っています。ヘッドライトと異なり、装着の義務はなく、通常はオプション(中には標準)設定されていることが多いです。

フォグランプの役割や機能について、解説していきます。

スズキ ジムニー
バンパー部分にフォグランプを備えたスズキ ジムニー

●フォグランプの役割

保安基準では、「ヘッドライトは必ず備えなければならない」、「フォグランプは備えることができる」と規定されています。

濃霧や激しい降雨、降雪の際には、ヘッドライトの光が空気中の水滴で乱反射して遠くに届かず、視界が遮られます。フォグランプは、このような状況下で視界を確保し、同時に対向車へ自車の存在を認識させる役目を担っています。また、広い照射角で路肩を見えやすくするので暗い夜道などでも効果を発揮します。

最近は、ヘッドライトがハロゲンからHIDやLEDへと進化して、十分な明るさと視界を確保できるようになりました。したがって、フォグランプはあくまでヘッドライトをサポートする役目であり、フォグランプ単体としての重要性はやや薄らいでいます。

●フォグランプの搭載位置と光色

搭載位置と光色については、保安基準で規定されています。

フォグランプの個数は2個以下、左右は車両最外側から400mm以内の位置に対称に、最上部が800mm以下、最下部が地上250mm以上でヘッドライトより下であることが規定されています。

前方の視界を確保するヘッドライトとは異なり、比較的近距離前方の広い範囲の視認性を確保するため、照射角を広くしたレンズを使っています。ヘッドライトの照射角が70°程度に対して、フォグランプは100°以上です。
高さ方向については前方の霧や雨の水滴に直接照射して眩しくならないように、ヘッドライトより狭く低く設定しています。

フォグランプの色は、白色または淡黄色と規定されています。一方、ヘッドライトの色は2018年の保安基準改正によって、それ以前の白色または淡黄色から白色のみに改定されました。

●かつて黄色いフォグランプが普及した理由

波長の長い赤色光は水滴を透過する霧中透過性が高く、波長の短い青色光は水滴で散乱して遠くへ飛ばない性質があります。赤色光は法規上使えないので、その次に波長の長い黄色光がフォグランプの主流として使われていました。

ただし黄色光は、距離感がつかみにくい、色の違いを区別し難いという理由から、最近は蒼白い白色系の光が主流になっています。

●リアフォグランプ

視界の悪い霧中で後続車に自車の存在を知らせるのが、リアフォグランプの役目です。欧州に比べると日本の採用例は少ないですが、点灯することによって後突回避などの安全性は高まります。

ただし、視界が良い状況でむやみに点灯すると、後続車のドライバーは眩しく、ストップランプと混同する可能性もあり、事故の原因になるので注意が必要です。


霧の発生や降雪の多い地域では、安全運転を確保するためにフォグランプは必要な装備です。

一方で、対向車のハイビームの次にドライバーがストレスを感じるのは、フォグランプの点灯と言われています。ファッショナブルな意図で不必要に点灯しているドライバーが多いようですが、対向車や後続車に迷惑をかけて非常に危険なので止めるべきです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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