1980年代、若者の誰もが欲しかったクルマに手が届くようになった。その欲しかったクルマとは?【新型TOYOTA Camry】

1979年、日本の乗用車保有台数は2000万台の大台を突破しました。そこから10年、1989年には3000万台に達します。1980年代、若者はそれまであこがれだったクルマに手が届くようになり、誰もがこぞってクルマを買うようになりました。

現在のトヨタ86が誕生するきっかけとなった80系カローラ/スプリンターシリーズ。

週末の湘南海岸、国道134号線は夏の昼間だけでなく、冬の夜でも渋滞。女の子をデートに誘うには最低でもクルマが必要でしたし、気の利いたBGMも用意できなければなりませんでした。

若者にスキーブームを巻き起こしたきっかけとなる映画「私をスキーに連れてって」に登場し人気を博したST165セリカGT-FOUR。

テレビで洋楽のPVを流す番組が登場、1979年にヘッドホンステレオが発売されたこと、1980年からレンタルレコード店が台頭し始めたことなどの条件が重なり、好きな曲を自分で編集、シチュエーションに合わせた「マイフェバリッツ」のカセットテープを持ってデートに臨むのが、若者のトレンドでした。

それまでセリカの派生車種という位置付けだったセリカXXから、よりスポーティに成長し、車名を輸出名と同じくした70系スープラ。

1980年代はクルマにとって、とても華やかな年代でした。セリカ、セリカXX(日本では86年からスープラ)やソアラと言った2ドアのスペシャリティモデルも人気を博しましたが、1980年にはマークII、チェイサーに続くモデルとしてクレスタが登場。85年デビューのカリーナEDなど4ドアモデルも多くのファンを集めました。80年代に発売されていた多くの4ドアモデルにはパワフルなエンジンを搭載したスポーティグレードが存在し、走りの4ドアを標榜しました。

その走りの4ドアの元祖とも言えるモデルがカムリです。カムリの名が世に出たのは1980年に登場したセリカ・カムリが最初です。その後、1982年にフルモデルチェンジされカムリと車名を変えます。セリカ・カムリ時代のトップユニットは、セリカ2000GTにも搭載された2リットル4気筒ツインカムの18R-G型、カムリになってからは同じく2リットル4気筒ツインカムの3S-Gが採用されました。3S-Gはトヨタの主力スポーツエンジンとして、80年代のル・マン用マシンにも使われていました。カムリは生まれながらにしてスポーティなDNAが組み込まれたクルマであったのです。

G“レザーパッケージ”。ボディカラーのエモーショナルレッド<3T7>はメーカーオプション。トヨタ純正用品(販売店取付)装着車。

今回フルモデルチェンジしたカムリは、多くのユーザーに支持され、モデルチェンジを繰り返すたびにその魅力を増し現在に至っていますが、今回の新型はそのなかでもとくに進歩的なクルマとなっています。トヨタは現行プリウスの開発時にTNGA(Toyota New Global Architecture)と呼ばれる思想をクルマ作りの基本とすることを発表しました。

G“レザーパッケージ”。ボディカラーのエモーショナルレッド<3T7>はメーカーオプション。オプション装着車。

プリウス、C-HR、プリウスPHVはこのTNGAの思想を盛り込んだモデルですが、TNGAの思想はプラットフォームなどに限定されました。今回のニューカムリはパワートレインなどにもTNGAの思想を盛り込んだフルTNGAの第一弾。あらゆる部分がゼロ発想で開発されました。

G“レザーパッケージ”。ボディカラーのエモーショナルレッド<3T7>はメーカーオプション。オプション装着車。

まずスタイリングです。フロントはトヨタ独自のキーンルックと呼ばれる顔立ちを進化。大胆に大型化されたロアグリルがワイド&ロー感をかもし出します。Bi-beamLEDヘッドランプと3層のLEDクリアランスランプにより、カムリ最大のチャームポイントであるワイド&ロー感はさらに強調されます。
サイドから見ればフェンダーやベルトラインは低く、タイヤの大きさが強調されています。リヤも低く構えた重心とワイドさを感じる張りのあるスタイリングが、安定感にあふれた姿を演出しています。

G“レザーパッケージ”。ボディカラーのエモーショナルレッド<3T7>はメーカーオプション。オプション装着車。

全体をとおしてスタイリングは世界各国のスポーティセダンにも負けない力強くスポーティな仕上がりで、見るからに走りを予感させるものとなっています。

カムリはアメリカの大人気モータースポーツNASCARでも活躍、2015年はシリーズチャンピオンにもなっています。新型カムリベースの2018年モデルもスタイリングが公開され、今から大注目となっています。アメリカでのカムリの立ち位置は、日本で言えばスーパーGTに参戦しているモデル並の存在なのです。

インテリアも独創性に富んだデザインが目を引きます。何よりも特徴的なのはきっちりした水平基調のインパネに突然出現する力強い曲線です。山あいを流れる沢のごとく、自然でそれでいて力強い曲線は、今までのどんなクルマにも見ることがなかった独創性にあふれる造形で、新しいカムリを象徴するポイントと言って間違いないでしょう。

質感の高いサテンメッキをアクセントとして採用、宝石のタイガーアイをイメージしたオーナメントパネルと合わせ、カムリのプレミアム感をよりいっそう引き立てています。

TNGAに基づいて開発された新しいプラットフォームは、重心高を下げることと重量バランスの適正化に寄与、サスペンションはフロントに新設計のマクファーソンストラット式を採用、リヤはダブルウィッシュボーンを採用となりました。走りの安定性はもちろん乗り心地の向上に大きく貢献するはずです。

さらに注目なのは新しいステアリングシステムであるラック平行式電動パワーステアリングの採用です。ステアリングラックを直接アシストするこの方式は、切り始めのレスポンスがよく、手応えもすっきりしています。

こうしたシャシー性能の元になるのがボディです。新型カムリのボディは環状骨格構造と呼ばれるねじれに強い構造を採用。各骨格の接合部には最新の溶接技術であるレーザースクリューウェルディングや構造用接着剤を採用し剛性を強化。超高張力鋼板であるホットスタンプも効率よく採用され、ボディ剛性に加えて、軽量化、衝突安全性の確保もしっかりと行われています。

今回のカムリは初の「フルTNGA」と言われていますが、その大きなポイントとなるのがダイナミックフォースエンジン2.5と呼ばれるTNGA新エンジンA25A-FXSを使ったハイブリッドシステムを搭載したことにあります。A25A-FXSは最大熱効率41%と従来のエンジンを上回る高い効率を実現。ハイブリッドシステムと組み合わせることで、システム最高出力は211馬力を獲得、JC08モード燃費33.4km/L(Xグレード)という、高い経済性&環境性能も実現しています。

G。内装色はブラック。オプション装着車

フルTNGAの採用ですべての面で新しくなった新型カムリは、熱かった80年代の思いを再燃させる要素にあふれています。カセットテープがデジタルオーディオプレイヤーに、ツインカムがハイブリッドになっても、あの熱い思いは変わりません。クルマは今も心を躍らせる要素にあふれています。なかでも新型カムリはその要素が濃縮された1台と言っていいでしょう。4ドアがお好きな方はもちろん、2ドアに乗れない事情の方、セダンに乗ったことがない方……きっと様々な方の心を揺さぶってくれることでしょう。

(諸星 陽一)

sponsored by TOYOTA

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる