トヨタとダイムラーが予定するFCVの壮大な普及計画が判明 !

大阪オートメッセ2013会場で「燃料電池セミナー」が開催され、トヨタ、ダイムラーによるFCV(燃料電池車)の開発状況や課題、展開計画などについて基調講演が行われました。

燃料電池セミナー in 大阪 2013

セミナー後半ではレーシング・ドライバーの片山右京氏をパネリストに、カーライフエッセイストの吉田由美さんを司会に迎えてパネルディスカッションへと進行。

それによると、トヨタ自動車では2015年からFCVの市場導入をスタートさせ、FCV普及に向け、車両販売だけで無く、水素インフラ関連ビジネスにも積極関与。官民一体となって水素ビジネスを構築することで2020年のFCV本格普及を目指すそうです。 

トヨタ自動車 技術統括部 高橋主査

 ▼トヨタ自動車講演より抜粋 (講師:技術統括部 高橋主査)

・約20年前にFCV(燃料電池車)の開発をスタート
・航続距離は500km以上と、既にガソリン車と遜色無いレベル
・大阪~東京間560kmを無充填で完走
・トヨタのFCVはHVシステムのエンジン部をFCスタックに置換した構造
・高圧水素タンク本数を4→2本へ半減予定(軽量化・低コスト化)
・普及開始時点の目標コストは現行比で1/20、量産効果で更に低減
・新型FCスタックの出力密度は現行比2倍の3KW/L(世界最高)
・2015年時点で水素ステーション国内 100箇所(4大都市から展開)
・2025年時点で水素ステーション国内1000箇所(47県庁所在地網羅)
・2030年時点で水素ステーション国内5000箇所(全国水素ネット構築)
・官民共同で戦略的にFCV普及を進める
・4大都市圏の地方自治体と水素ビジネスを構築
・2015年に世界で数百基の水素ステーション設置を目標
・2020年代の本格普及期には年間数万台規模でFCVを販売

燃料電池セミナー in 大阪 2013(トヨタ)

一方、ダイムラーは現行の「B-Cass F-CELL」のシステムをコンパクト化してエンジンルームに統合すべく開発中。インフラ構築では2013年~2030年にかけてドイツ全土に1000箇所の水素ステーションを設置する予定と言います。

燃料電池車 B-Cass F-CELL

 ▼ダイムラーAG講演より抜粋 (講師:コンセプト製品課 村上マネージャー)

・水素充填時間3分を目標
・現行「B-Cass F-CELL」の航続距離は385㎞
・FCスタックの体積を30%削減し、関連パーツをエンジンルームへ統合
・EVは中・短距離移動用、FCVは長距離~短距離移動を全て網羅
・米国、ドイツ、日本から水素インフラ普及が進むと考えている
・2002年に「CEP」(クリーン エネルギー パートナーシップ)がスタート
・2009年にジョイントベンチャー「H2モビリティ」がスタート
・2013年からLindeグループと共同で水素ステーションを20箇所新設
・2015年時点で水素ステーションをドイツに50箇所設置
・2020年時点で主要都市間に400箇所設置(人口カバー率60%)
・2030年時点で1000箇所設置(ドイツ全土に展開 人口カバー率100%)
・ルノー日産アライアンスと共通FCシステム開発、普及に向けて価格を引下げ
・2月27日から開催される「FC EXPO2013」で詳細講演予定

燃料電池セミナー in 大阪 2013(ダイムラー)

「燃料電池車」と言うと漠然としたイメージしか湧きませんが、「世界最大の新車市場 米国でEV普及が進まないワケとは?」 でも触れたとおり、ガソリン車に代わる究極のクリーンエネルギー車として有望視されているだけに、トヨタ、ダイムラー共に普及に向けて着実に開発が進んでいるだけでなく、インフラが普及阻害要因にならないように政府、民間企業を巻き込んでダイナミックに活動を展開している様子が伺えます。

 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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